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戦力分析 助っ人現る⁉

 ハミマ共和国のクーデター。そして国名の改定。


 それは真魔王しんまおうカロン・アシュフォードが国を乗っ取ったことを意味する。


 ラルクが呆れる。

「カロン王国? バカじゃねえのか? 何考えているんだ、あのクソ親父……」


「フ〇ック! 正式名称は『神聖しんせいカロン・アシュフォード王国』だがな」


「ますます恥ずかしい名前じゃねえか……」と、ラルクは頭を抱える。


 そこでギルバートが、ハッとする。

「もしかして! ハミマ軍をサブン連邦やラーソンに侵攻させたのは、それが狙いだったのかも?」


「なるほどですわね。軍隊を外に割り振って首都の守りを手薄てうすにさせたのですわ」


「ファ〇ク! 西の魔王はアンデッド軍団を召喚できる! そこにカロンのテイムがあれば首都の占拠は可能だ!」


「クソ親父め……ハミマを乗っ取って世界中を戦火に巻き込むつもりだな」


「ファッ〇! だが、奴の居場所は分かった。どうするよ? ラルク」


「もちろん、奴の野望をぶっ潰す! 予定通りだ」


「さすがダーリンですわ! でも、問題はどうやってハミマに入国するかですわね……」


 ファンクは、汚い字で沢山書き込みをした世界地図を広げる。

「フ〇ック! 一応、最新の戦況をメモっといたぜ!」


 ギルバートがそれを指さしながら言う。

「首都ポルトまで行くには、前に使ったテフラ峠から入国するルートが考えられますが……ずいぶん、遠回りになってしまいますね」


「ファ〇ク! あの頃は寝台列車で移動できたが、今は戦時中だから使えるかどうか判らねえぞ?」


 チキは海を越える最短ルートを提案する。

「船をチャーターして、ワルデンガ島経由で向かうのが最良さいりょうですわ」


「フ〇ック! けど、海の上だと逃げ場が無いな」


 海の上では目立つうえに、敵の軍艦に見つかってしまうと厄介だ。

 簡単に追いつかれてしまうだろうし、砲撃を食らう恐れもある。


 ネムはドラゴンを使うべきと主張する。

「体力のある子を選抜すればいいよ♪ その方が速いし」


 確かに、ネムは手懐てなずけたドラゴンで何度かハミマ・ラーソン間を移動したという。

 

「ファ〇ク! けど、戦争が激化してる今、空も安全ではないと思うがな」


 そこで思案中だったラルクが口を開く。

「戦闘を避けて国境を越えるにはテフラ峠だろう。サブンから戻ってきた時は難なく通ることができた」


「フ〇ック? じゃあ、ギルバート案でいくのか?」


「いや。ボンチャン海峡かいきょうを越えていく」


「ファ〇ク⁉ マジかよ? そっちは最前線じゃねえか!」


 ラルクが示したのは、ここから西に向かい、ワルデンガを越えてラーソンの西端まで行くコースだ。

 

 ラーソン王国の最西端は、海峡を挟んでハミマに近い。

 そのため、最初にハミマが侵略してきた場所だ。


 ギルバートが首を傾げる。

「危なくないですか? 両軍が入り乱れる激戦区ですよ?」


「そうだよ。お兄ちゃん、無謀むぼうだって」


「いや。あえて、その中を突っ切る。下手に避けるよりもいい」


「なるほどですわ! 混乱に乗じて入国するということですわね」


「フ〇ック! 最新情報ではラーソン軍が押し返して膠着状態こうちゃくだそうだが……」


 だが、ラルクは楽観的だ。

「なんとかなるさ。とりあえず行ってみよう」


 一見、無謀なルートではあるが、ラルク達は針路しんろを西にとることにした。


 ちょうどそこに来客があった。


 ラルク達の部屋に入ってきたのはブタジャーネとブタジャキン。

 ともに魔王の姉弟だ。


「フ〇ック! 遅かったな! けど、よく来てくれた!」


 美豚のブタジャーネは東の魔王だ。

「もちろんでビュー! 大魔王様のためなら、どこでもお供するでビュー」 


 豚小僧のブタジャキンは南の魔王。

「お、お役に立てるかどうか不安でブゥ……」


「ファ〇ク! そんなこたぁねえ。貴重な戦力だ。汚物召喚おぶつしょうかんは、お前にしかできねえ特技だ」


 ネムが「汚物召喚?」と、変な顔をするのでラルクが説明してやる。


「ンコを大量に召喚する能力だ」


 初めて遭遇そうぐうした時に、豚小僧は勇者グランをンコまみれにした。

 

 あの時のことを思い出してピピカが尊敬のまなざし。

「ンコでしゅ! ンコの人でしゅ!」


 チキがゲンナリしながら言う。

「おならだけの人と同類ですわね。かぶるんじゃありませんこと?」


「なっ!? おならだけとは失礼な! 僕のガスは七色の効果があるんです!」


 ギルバートの抗議を受けてチキが「はいはい」と、スルーする。


「ファ〇ク! 例のものは持ってきたか?」


「もちろんでビュー」

 そう言ってブタジャーネは小瓶こびんを取り出してファンクに差し出した。


 豚小僧が得意げに説明する。

「できたてのホヤホヤでブゥ! 新鮮な臭さでブゥ」


「フ〇ック! ご苦労、ご苦労。これがないと大魔王に戻れねえからな」


 どうやらファンクは悪臭を放つ液体を切らしかけていたらしい。

 それの予備を作らせていたのだ。


 ラルクが一同を見回して笑みを浮かべる。

「それにしても大所帯おおじょたいになっちゃったな」


「ファ〇ク! 当然だ! 相手は真魔王のカロンだ。総力戦になる!」


 敵の大将は、強烈なテイムと魔法を操る真魔王カロン。


 それにギルバートの父であり、ネムの恩人でもある変態紳士がついている。


 彼は変態だが、ガスの能力はギルバート以上かもしれない。

 手強てごわい変態だ。


 ギルバートが頷く。

「西の魔王、それから北の魔王も、あちらの陣営と考えて差し支えありませんね」


「ファッ〇! そうだ。北のドングリ野郎はさっそく裏切りやがったからな。あっちが魔王2人なら、こっちも対抗してこいつらだ」


 ラルクが言う。

「それに、チキもピピカもいる。ネムのドラゴン召喚だって強力だ」


「フ〇ック! テイムにはテイムを! ガスにはガスを! いい勝負だぜ!」


 ラルクはファンクに視線を送る。

「こっちにはファンクもいるしな。なんせ大魔王だ」


 ギルバートが山賊一味をチラ見する。

「それに比べて、あれはどうなんでしょうか……戦力外せんりょくがいでは?」


 戦力外と言われてトカゲの兄が反応する。

「えっ!? 俺らは戦力外なのか?」


 トカゲ弟が不安そうに尋ねる。

あんちゃん、戦力外ってなんだ?」


 するとトカゲ兄はドヤ顔をみせる。

「戦力の外! つまり、秘密兵器ってことだ! 切り札ともいう」


「兄ちゃん! そうなのか? オイラ達、責任重大だね!」

「そうだ! 俺等がついていれば、珍魔王ちんまおうのコロンなんてイチコロさ!」


 トカゲ兄弟を放置して山賊親分はボンヤリしている。

 相変わらず何を考えているか分からない。


「フ〇ック……あいつら、置いていくか? そろそろ決断しないとな」


 能天気なトカゲの兄弟やボンクラ親分が戦力になるとは思えなかったが、ラルク一行は、持ちうる最大の仲間を引き連れて、打倒、真魔王の旅に出発する。


     *     *     *


 西に向かうにつれ、軍の関係設備が増えてきた。

 避難してきた人々の臨時施設も多い。


 これから西に向かうのは軍の関係車両ぐらいのもので、ドラゴンで移動するラルク達は何度も軍から警告を受けた。


 なるべくコトを荒立あらだてないように注意しながら、最短でボンチャン海峡を目指す。


 地上の半壊した街並みを見てチキが眉を顰める。

「酷い有様ありさまですわね。この辺りまで攻め込まれたのかしら?」


 ラルクが頷く。

「ああ。今はラーソン軍が奪還だっかんしたようだが、その代償は大きいな」


「ファ〇ク! もうすぐ海峡につくぞ。暗くなるまで待つか?」


「そうだな。一応、あの山に登って偵察しよう」


 ここは戦場の真っただ中。


 まずは、軍の配置を含め、周囲の様子をうかがうことが先決だ。


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