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勇者案内人レイ~Heaven or hell~  作者: 時々
勇者修行編
2/15

勇者の少女、村人Aと初エンカウント

 勇者案内人のレイだ。今回は勇者が最初に立ち寄る村の村人(男)という設定。よくいるでしょ、聞いてもいないのに訳知り顔で得意気に説明したがる村人A。今回は俺がその役ね。勇者君のパーティーメンバーとしてお手伝いするのではなく、今回は勇者を各地で助ける謎の助っ人マン的な感じになろうかな、と。

 準備期間は神様が時間を戻してくれた期間だったので約一年。この世界の常識を学び、村に溶け込み俺の準備は完了。そして明日はいよいよ勇者がこの村に立ち寄る日だ。どうせだったら女の子がいい。童貞やキザ男の相手をするのは疲れるのだ。見守っていても楽しくないし。というわけでもう寝るか。



♦♦♦



「よく知っている天井だ」


 よし、今日から俺の仕事が本格的に始まる。まだ朝早いし今の内にプランを纏めておくとするか。

 まずは何といっても自然な形で勇者と接触せねばなるまい。もし騎士がお供をしているようだったらとりあえず媚びるような親切風一般人の振りをしてさりげなく騎士とお近づきになり、外堀を埋めてゆくゆくは勇者とどこかでゆっくりお話を。一人で来たら村の案内をする村人Aになり、既にパーティーを組んでいたら様子見しよう。うむ、完璧だ。


「とりあえず支度を済ませるか」


 着替えようとして俺はベッドから降りる。その時、俺の家の一階からおかしな音が聞こえてきた。ガチャッと家の扉が開く音だ。おかしいだろう? だってノックの音なんてしなかったからな。きっと俺の気のせいに違いない。勝手に家に入ってきても許されるほど親密な関係をこの村で築いた覚えはない。


―――あれぇ、おかしいな。何処にもないよぉ。


 声が聞こえてくる。ふむ、女の子の声だな。きっと俺はまだ目が覚めていないんだろう。だってありえないからね。

 あーやだやだ。俺、もしかして勇者が来る日だからって緊張しているんだろうか。とりあえず寝よ寝よ。

 俺はもう一度ベッドに横になって布団をかぶる。


ガシャ―ンッ


「…………!!」


 何だ今の音は!? 何かが割れる音がしたぞ!?


――ひゃ~っ、びっくりしたぁ


 女の子と思わしき人物は驚きの声を上げた。いやいや驚いたのは俺だっつの!? 何今の音。もしかしてこれって夢じゃない? 俺、ちゃんと目覚めてるのか。だったら尚更おかしくない? だって何かさっきから女の子の声が一階の方から聞こえてくるもん。ありえないからね、うん。同居人なんていないしね。


――あ、壺の中から変な草が出てきた。これがきっと“やくそう”ってやつだ! ゲット~! よーし、この調子でどんどんアイテム集めるぞぉ~!


「待て待て待て待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「○! ※□◇#△!」


 俺の出した叫び声に、口をパクパクさせながら女の子がこっちを指差しながら驚いてる。そりゃ男が大声上げながらドタバタ階段を下りてきたら驚くよね。でもさ、驚き具合で言ったら絶対俺の方が上なんだわ。


「おたく、人の家で何やってんの?」

「え、人? なんで? 気配察知には何にも引っかかんなかったのに……」


 何この子、気配察知のスキルでわざわざ確認してから忍び込んだの? 泥棒ですか。しかも俺の大事にしていた壺が割れてんだけど。それとこの子、今手に小樽持ってるけどさ……まさかそれも割るつもりじゃないよね。誰か知らないけどぶっ飛ばすよ?


「じーー」

「な、なによ」

「いや君、誰」

「え、いやその……コホン。私は勇者のユウキ・ミライよ! えっとこっちじゃミライ・ユウキかな。気軽にミライって呼んでくれていいわ」

「あっそう。ではミライとやら、用事はもう終わったのかな?」


 あーやばい。この状況が理解できなさ過ぎて思わずにっこりとしてしまう。この子今何て言った? 誰か聴き間違いだと言ってくれ。


「うん、アイテム収集はバッチリよっ。お邪魔したわね。それじゃあ」

「逃がすかぁぁぁぁぁ!!」

「ぶげらっ」


 必殺跳び膝蹴りじゃオラァ! そしてこんなのが今回の俺の担当ぅぅぅぅ。お先真っ暗……



♦♦♦



「う、うーん……」

「起きたか泥棒」

「ふぇ、ここどこ……ってあなたはさっきの変な男!」

「変な泥棒に言われたくない」


 わーい、女の子の勇者だぁ~。やった~…………はぁ。まぁいいや。とりあえずまずは見てくれだ。当然、あんなことをするからには地球からの転移系勇者だろう。会話が通じるのはスキルだな。これも当然だが髪の色は黒。ツインテールになるようにゴムで結んでいる。目はちょい釣り目。胸はない。絶壁だ。非常に残念。肌は白色に近い。変なシミとか傷もなく綺麗だな。黒髪と合わさって非常に映えている。全体的にすらっとした体型。綺麗というよりも可愛いという表現だな。たださっきの行動含めて理知的には見えない。そこはかとなく香ってくるポンコツ臭。

 容姿100ポイント。絶壁マイナス50ポイント。ポンコツ度マイナス40ポイント。出身地(地球)マイナス10ポイント。合計0ポイント。


「……ふっ」

「あーーー! 今わたしの胸見て嗤ったでしょ!? わたしまだ15だし、これからもっと大きくなるもん!」


 新情報追加。15らしい。もう成長の見込みはないな。



♦♦♦



「俺はこの村に住んでいる村人Aさんだ。気軽にAさんと呼んでくれ」

「わかった。じゃあレイさんに質問!」


 このポンコツめ。これだからあの世界出身の勇者は嫌なんだ。勝手に鑑定しやがったな。普通断りもなくするか? しかもポンコツのせいで隠せてない。どうせ鑑定するのならばれないようにしろ。まだ名乗ってないのに名前呼んだら変だろうが。


「何で気配察知のスキルに何も感知できなかったんですか!? レイさんは対応できるスキル持ってないみたいですけど?」

「とりあえず、人を勝手に鑑定するのはやめろ」

「あっ。そ、そんなつもりじゃなくてっ、その……」


 一応ダメって認識はあるのか。だからってやった時点でもうダメだがな。


「別にいいけどさ。はぁ、もう計画が滅茶苦茶だ」

「計画?」

「こっちの話。鑑定は偽装スキルのレベルが上の者には意味がないんだ。とりあえず俺のステータス見せるからミライちゃんのステータスも見せてくれない」

「ちゃん!? 子ども扱いは良くないんだよ! せめて呼び捨てにしてよぉ」

「はいはい。じゃあまずは俺からな」


 俺は偽装してあったステータスを解除し、すぐまた偽装し直したものを目の前に表示させる。





レイ 21歳? 男 レベル

職業:村人

筋力:50

体力:60

耐久:50

敏捷:40

知力:50

魔力:60

スキル:気配遮断・偽装・生活魔法・念話


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「これがレイさんのステータス! ふむふむ、これぞ村人って感じだねっ」


 どういう意味だコラ。ちなみにだが俺のステータスは偽装し直したといっても、偽物という意味ではない。職業柄、俺はいくつものステータスを持っており、その全てが本物である。よって今は本当にこのステータス通りの力しか発揮できないのだ。


 俺が見せたステータスはほぼ平均。新人冒険者だと平均ステータスは70前後。職業はレベルアップ時に各ステータスに補正がつくのが普通だが、村人は唯一補正がつかない。よって村人は大人しく一生村人として生きていくのが普通である。


「でも何でレベルが見えないの?」

「さてな。細かいこと気にしていたら禿げるぞ?」

「禿げないもん! よーし、こうなったら勇者であるわたしのステータスプレートを見てびっくりさせてやるんだから!」


 今の会話を聞いて少なくとも知力が低いのは予想出来るわ。ま、俺のレベルが見えないのは仕方ない。だってないからね、そんな概念。仕方ない仕方ない。


「じゃあ見させてもらおう。せいぜい俺を驚かせてみてくれ」


 ま、驚くはずがないんだがな。これでも何人もの勇者たちを見てきたんだ。レベル1の時点でチートくさいスキルをいくつも持っている奴とか。ステータスが異常に高い奴も見てきた。ま、その原因はほぼ転移を司る神様の方にある。アイツらの言う、“お主は選ばれた奴じゃ”とか、“不憫な人生を送ってこられましたね可哀そうに。異世界ではどうか自由に生きてくださいませ”という発言は全て嘘だ。適当な理由をつけて強力なスキルを与える理由付けをしているに過ぎない。内心はこう思っているはずだ。“神に感謝しながらさっさと異世界行けよコラ。こっちも忙しいんじゃボケ。ニートやらゴミ虫でもこれだけのスキル与えてやったら生きていけるだろ。後はハーレムでも何でも勝手にやってろ”と。そしてその負担が俺たちに来るのが大半である。





ミライ・ユウキ 15歳 女 レベル1


職業:勇者

筋力:20

体力:40

耐久:30

敏捷:200

知力:20

魔力:0

スキル:言語理解・気配察知・魔力感知・逃げ足・不意打ち補正




「ふっふーん。どうだ、凄いでしょ!?」

「…………」



 うん、びっくりだわ。君、一体何になるつもりなの? 勇者になる気あるんだよね

読んでいただきありがとうございます。



情報開示

偽装……ステータスを偽りのものへと変化させる。

生活魔法……生活に便利な基礎魔法が使える。攻撃性は極めて低い。

気配察知……一定範囲内の生物の気配を読み取る。

魔力感知……一定範囲内の魔力の気配を読み取る。

逃げ足……敵に背を向けている間、敏捷地に補正

不意打ち補正……敵に悟られずに攻撃を当てた場合、攻撃値に補正


 スキルには常に自動で発動するものと、任意で発動するものがある。また、発動には魔力を使うものと使わないものがある。


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