6.
「本当だ」
響様がため息をつく。
「だから信じられないなら–––」
「信じる」
響様がこちらを見る。
「響様がそう言ってるし、それに私も信じたいと思った」
「そうか・・・。でも響様はやめなさい」
「今ってデート中なんだよね?楽しもうよ」
響様は笑うと紅茶を飲む。
「そうだな」
私もケーキを食べるためにフォークを握る。その感覚もケーキを切る感覚もきちんとある。
(こんな光様似のイケメンと本当にデートしてるんだ・・・。しかも現実。・・・最っ高)
私はケーキを食べながら満面の笑みを浮かべた。響様を盗み見るとこちらを見ながら笑っていた。恥ずかしくなり視線を逸らす。
(そういえば響様は私といるとき、9割型笑ってる気がする。・・・デート、楽しんでくれてるのかな?)
食べ終わり、少し休憩した後、席を立った。お会計もきちんとあり、当たり前のように響様が出してくれる。そのお金も日本のもので現実味があった。
店を出ると、響様がこちらに手を差し出す。迷っていると、「ほら」と私の手を引っ張った。鼓動が早くなる。
歩いていくと目の前に森が現れた。
「え?ここを行くの?」
不安になり、響様に言うと「あぁ、そうだよ」とそのまま進んでいく。森の中は木漏れ日のお陰で多少日が入るがそれでも薄暗い。なんだか怖くなり、響様に近づいた。
「ん?どうした?」
「いや、ちょっと・・・」
言いたいことを察したのか握る手を強めてくれる。その気遣いが嬉しかった。
そして森を抜けると、ひらけた先に街があるのが見えた。自然に囲まれた中とは思えない高層ビルが立ち並んでいるのが見える。
「次はあそこでショッピングデートをしよう!」
響様はどこからか取り出したサングラスをかけ、「1回好きな子としてみたかったんだよねー」と言いながら、「さぁ、行こう!」とはしゃぎながらも優しく手を引っ張って走り出した。
(そんなにショッピングデートって楽しいのかな?でも確かに街に溢れてるカップルはみんな楽しそうにしてるよね・・・)
彼氏いない歴=年齢の私の頭の中では疑問だったが、何も言わず、浮かれている響様についていく。
(あ、そういえば私、お財布・・・)
手を繋いでいない方でポケットを探るが出てこない。
(ていうか・・・)
気にしていなかったが、自分の服装を見ると、ずっと前に「いつかデートで着るかも!」と気合いを入れて買ったワンピースを着ていた。
(うわぁ・・・。これを着れるのは嬉しいけど、なんか・・・恥ずかしい)
買い物をしてたときの自分のニヤニヤ顔を思い出し、なんだかむず痒くなった。