5.
「え?あれ?」
聞き覚えのある声がする。
「もっしもーし、実花ちゃん?」
ふざけたように言うその声は魅力的で、眠気覚ましにはピッタリだった。ガバッと体を起こす。
「あれ?私・・・」
「もー、また寝ちゃってたよ?」
ふてくされたように口を尖らす響様をジッと見つめる。
「・・・これって夢なんでしょ?」
「んー?」
響様はとぼけたような顔をする。
「夢なら夢でもいいよ・・・私は・・!」
「いや、これは現実だよ?」
「・・・は?」
「いや、だから現実だって」
響様の発言に驚きを隠せない。
「いや、だって、私さっきまで保健室にいて、それでウトウトしてて・・・」
「うん、だからそこから連れてきた。ここに」
何を言っているのかわからない。
「じゃあ証拠に顔の肉つまんでみ?夢の中だったら痛みは感じないって言うじゃん?」
響様に促され、顔の肉を引っ張る。
「いててて・・・」
「ほら、痛みあるでしょ?だからここは・・・」
「それだけじゃ信じられないよ!この前も5時間勉強して、ベッドにダイブして・・・。ここにいる間に意識失くしたら普通に部屋に戻ってて朝だったし・・・。「あー、夢だったんだな。あんな素敵な夢はもう見られないんだな」って諦めてたのに・・それが、こんな・・・」
「夢なら夢だと思っててもいいよ。ただし、今、この場のことは現実。デートも、そして俺が君のことを好きだってことも」
突然の告白にドキッとする。
「サラッと言ったね」
「まぁ、俺クオリティーだな、そこは」
そう言ってクスクスと笑う響様を見て、なぜか肩の力が抜けた。実花も一緒になって笑う。
「やっと笑ってくれた」
響様がこちらを真っ直ぐに見つめてくる。
「実花の笑顔、俺、一番好きなんだよね」
そして天使の微笑みをこちらにくれる。また鼻血が出そうなほど顔が赤くなっているのがわかった。慌てて視線を逸らす。
「は、話を逸らさないでよ」
「ごめんごめん」
響様は机に頬杖をつき、こちらを見る。その姿に見惚れそうになり、首を振った。
「ここは本当に現実なの?」