4.
「んー・・っ」
携帯のアラームが鳴っている。しばらくボーッとしてからハッと素早く起き上がった。
「響さっ!・・ま・・」
いつもの私の部屋。周りはアニメキャラの光様に囲まれている。机には開きっぱなしのノート。
「そんな・・・あんなリアルだったのに夢だったの?」
「いや、逆に疑えよ」
春香からのツッコミが炸裂した。
「そうだよー。そんな夢みたいな状況現実である訳ないじゃん」
千里からのツッコミが矢のように心に突き刺さる。
「で、でも現実みたいだったもん!」
「みたいだっただけでしょ?」
「うっ・・・」
春香と千里は馬鹿にするように笑う。
「夢だからまた同じ夢を見ることはほぼ0に近いだろうし」
「もう見ることもないかもね」
「いい加減現実見なよ」
その言葉を聞いた瞬間、何かが自分の中で壊れた音がした。
「うん、わかった」
そう言った私の声には覇気がない。頭がクラクラする。
春香と千里はその様子を見てかはわからないが口をつぐんだ。立とうとしたが足がふらつく。
「だ、大丈夫?」
そう言って支えてくれた手を払いのける。
「え・・・」
春香の声がした。
私は笑顔になれているかわからない顔で2人を見上げると、「なんか体調悪いみたい。保健室行ってくるね」と言って、そのまま教室を出た。
あの場にいると自分を完全否定されているような気がして、いられなかった。
春香と千里が心配するような声をかけてきたが苛々しかしなかった。
夢見てることなんてわかってる。でもなにがいけないのかがわからない。さっきだってただ夢で見たことを話しただけ。
光様に夢中なことを知ってるからあえてああいう厳しいことを言ってくれてるのもしれないけど–––
「普通にいい夢だったんだねって言ってほしかっただけなのに。友達だから共有したかっただけだよ」
小さい頃からの幼なじみだし、私がフラフラして現実と向き合ってないように見えて、親目線で言ってくれてるのかもしれないけど。
でも、そんなのは–––
「ありがた迷惑だ」
「あら、早出さん。保健室に来るなんて珍しいわね」
保健室の先生はそのまま何も聞かずに、ベッドがある方へ誘導してくれた。
私も「ありがとうございます」とだけ言って、そのまま横になる。
布団を頭までかぶると、少し気分が落ち着く気がした。
途端に涙が溢れ出してくる。
なんで泣いているかは自分でもわからないが、それでも涙は流れる。
そのうちに涙が止まり、そのままうつらうつらと眠気に身を任せた。