14.
「あら、その反応はなにかしら?」
おほほと楽しそうに響様が笑う。また首に手を伸ばしてきたので、今度は思い切り引っ叩いてやった。
「いった!!」
本気で痛がってる響様を見て、つい爆笑してしまう。私が油断してるすきに「このやろう!」とニヤニヤしながら首筋を手で軽く撫でるように触ってきた。
「ひゃ・・い」
無意識に出た自分の声に恥ずかしくなり口を噤む。そのまま上目遣いに響様を見ると、「そうかそうか」と言いながら頷いていた。
「実花・・隠さなくてもいいぞ」
「うーっ・・・」
出さなくてもいい声を出してしまう。
(首が敏感なことには完全に気づかれた。でもまだ本質には気づいていまい–––)
まだ余裕があるところを悟らせないように、「そっ、そんなこといいから早く行こうよ」と急かすように背中を押す。
「ふっふっふ、まぁ、いいだろう」
なんかイラッときたがシカトした。そしてそのままあらゆる発言をシカトし続け、ゲームセンターに到着した。
「・・・実花ちゃん、怒った?」
なんだかしょんぼりしている響様をシカトして、目に入ったUFOキャッチャーの方に走る。ここでもやはり知らないキャラクターばかりがクッションやフィギュアなどの景品で置いてあり、よくあるお菓子をガッツリ取るタイプなどもあったが、異世界だからか文字が全く読めず、どんなものなのか味すらも検討がつかなかった。
(そういえば、さっき注文したときも響様に飲みたいもの言ったらよくわからない言葉で話してたな。ショップで店員を呼んだときもそうだった。でも、男をぶっ飛ばした時はちゃんと日本語だったなぁ。私にわかるように・・かなぁ?)
ブツブツ独り言を唱えていると、「ねぇねぇ」と耳元で吐息混じりで声がした。
「うっ・・・」
耳を庇うように手で覆い振り向く。響様が苦笑いで立っていた。なんだか腹が立ってくる。
「もうやめてよ!くすぐったい!」
私が大声を出すと「ご、ごめんごめん」と焦ったように言う。そしてこちらを上目遣いで見る姿に思わずドキッとしてしまい、視線を逸らした。
「周りの音がうるさいから声が聞こえないのかなと思ったんだ。悪気はなかった」
そして響様はそのままゲームセンターの奥へと歩いていく。後に続いて歩いていくと、若者たちが賑わっている一角があった。上の案内プレートには「プリクラコーナー」と書いてある。
「あそこ行こ!」
「えー?なに?聞こえなーい」
わざと聞こえないフリをして、両耳を塞いだ。そして元来た通路を戻ろうとする。
「全く・・・」
小さく呟くような声がして、気づくと手を掴まれ、店の死角に連れ込まれていた。
「・・・っ」
体が妙に密着している。キレイな顔が目の前にあるだけで心臓がバクバクいって死にそうになってしまう。足の間に響様の膝が侵入してくる。小さく悲鳴を上げそうになり、それを察したのか優しく私の口を手で覆った。
「ねぇ」
耳元で甘美な響きを含んだ囁き声がした。私は今きっと顔が真っ赤で耳も真っ赤。恥ずかしすぎて目に涙が溜まる。
「なんでさっきからそんなに意地悪するの?」
私が答えられない状態なのを見て意地悪そうに笑った。