13.
試着室を出ると響様が椅子にかけて待っていた。
「うん、やっぱりとてもよく似合ってるね」
満足気に頷く。
「ビックリしたよ。サイズとか全く気にしないで入っちゃったからどうしようかと思ったけど、着丈もちょうどいいし、ピッタリだし・・・」
「女性は見てれば大体3サイズがさ–––」
私はとっさに体を庇うように抑える。響様を睨みながら見ると、頭をかいて「あー、うそうそ。たまたまだよ」とバツの悪そうな顔をした。私は笑った。
「今日履いてきた靴とも相性いいし・・・」
「うん、そこも考えて選んだからね。じゃあ出ようか」
響様に手を引かれ、そのままエスカレーターで上へ行く。
「お腹はどう?空いた?」
「んー、まだ大丈夫かな」
「じゃあこの上にゲーセンがあるから行こう!」
「嫌だって言っても連れてくでしょ?」
エスカレーターを降りたところで、「え?嫌なの?」と私の方を向く。なんだか子犬のような悲しい顔をしていた。
「いや、別にいいよ。今日は響様のワガママなんでも聞いてあげる」
(服も買ってもらっちゃったしね)
私の言葉を聞いて響様はまた笑顔になった。
「よっしゃ!じゃあ行こう」
そのままエスカレーターを歩くように上っていく。
(コロコロ感情が変わるなぁ。イケメンってこうなのかな?)
決めつけすぎか、と苦笑いしながら首を振る。
「首痛いの?」
響様が首を触ろうとしたので仰け反る。
「あらやだ、ショックだわ」
いきなりオネエ化した響様をシカトする。するとまた手が伸びて首筋に触れた。
「うわーい!!やめろ、馬鹿者め!」
響様のキレイな手を傷つけないように振り払うと、首筋を手で庇った。