12.
「いや、でもここは–––」
響様はニヤニヤした顔でこちらを向く。入った店はロリータ専門店だった。
「なぜ、よりにもよって・・・」
「なんか普通の服じゃピンとこなかったから。まぁ、入ってみようよ」
響様に半ば引きずられるように入っていく。中には眩しいほどの天使のようなアイテムで溢れていた。私の着ている服も白いし可愛い系のワンピースだが、ここに置いてあるものと見比べると霞んでしまう。
「すごいな。俺、初めてこういうとこ来たわ」
レースの頭飾りを手に取り、私の頭につける。
「やっぱ実花、可愛いからなんでも似合うな」
「じゃあ普通のとこのでもいいじゃん!」
半ベソ気味の私を見て、響様は声を殺して笑っていた。
(ムカつく・・・)
私が睨むと、「全然怖くなーい」と言って、ほっぺをツンツンしてきた。そして満面の笑みでこちらを見る。ドキドキしすぎて響様から目が離せなくなってしまった。
(よく考えたらこんなイケメンとデートできるだけでもすごいことだよね・・・。てかそんな相手に好意を持たれるって–––)
顔が赤くなってしまう。響様は私の様子に気づき、「やっぱ恥ずかしいか?」と言って、頭から飾りを外した。
「いきなり挑戦しすぎたか」
そう言って笑った。響様はそれを元の場所に戻すと今度は服のコーナーに目をやっている。その様子を私はじっくり観察した。
(仕草の1つ1つが綺麗–––。やっぱりイケメンって何やっても様になるよなぁ。私ももっと美人だったらな。響様の隣にいても釣り合うのに・・・)
響様と不意に目が合う。
「どうした?」
1着の服を持ちながらこっちに歩いてくる。私と視線を合わせたまま。ドキドキしてしまう。そしてそのまま近くにきて服を合わせる。今更だが恥ずかしくなり俯いていると、響様は指で私の顎を持ち上げた。
「ほら、見てごらん」
キャスター付きの鏡を前に持ってくる。ロリータっぽさがあまりないシンプルなデザインだった。フリルもしつこくなく、何より私にとても似合っていた。
「実花のために作られたようなワンピースだね」
気づくと響様の顔がすごく近くにあって焦った。
「どう?気に入った?」
「う、うん・・・。でも、私お金–––」
「あぁ、それは気にしなくていいよ。可愛いワンピースを汚してしまったのは俺の責任でもあるし」
困った顔で見つめていると、「気にしなくていいから着替えておいで。それをこのまま着ていこう」と言って、店員を呼ぶ。値札などを外してもらい、そして試着室へと案内された。
「今、お召しになっているワンピースはよろしければこちらの袋にお入れください」
店員に袋を渡され、お礼を言い、試着室のカーテンを閉めた。