10.
街の中まで戻ってきた。
(まぁ、確かに異世界って言われれば納得はできるけど・・・)
辺りを見渡す。
(異世界と言えど歩いているのは普通の人ばかりだな。なんかもっとエルフ系とか、顔だけ動物のやつとかいるのかと思ってた)
「ねぇ、響様」
「響様はやめなさい」
「ここが異世界って・・・」
響様はクルッとこちらを振り返り、「あぁ、そうだよ。ここは異世界」と言って手を差し出してくる。私はその手をとった。
「ショッピングデートできてないからしよう」
そう言われて頷くと、響様はまた先程と同じようにスキップしそうなくらいルンルンで歩き出す。
「ここに入ってるショップが気になってたんだよね」
そう言ってショッピングセンターのような建物の中に入っていく。内装も現実世界と変わらず、ひらけた部分があり、上に行けるエスカレーターがあり、周りはファンシー系やクール系などを取り揃えたそれぞれのショップが並んでいる。
「まず初めにちょっと飲みながら話そっか」
そう言って、ドリンクが並ぶお店の列に並んだ。スムージーやソフトドリンク、お酒まで置いてあり、店頭で渡してくれるタイプだ。
「今、この世界ではタピオカという丸くてフニフニした柔らかい感触のものが入った飲み物が人気なんだ!」
「あ、それ、こっちも一緒」
「・・・そうだよねー。新感覚だったから現実世界でもないかなと思ってたんだけどねー。まぁ、現実世界の方が流行り廃りが進んでるから、ちょっと遅れてこっちで流行るみたいな風習があるんだよねー」
あはははと悲しそうに笑いながら、響様のテンションがあからさまに下がる。
「なるほどね。確かにこっちではもう次に流行るのではっていうポッピングボバとかいうのがきてるもんね」
「なんだそれは!」
「なんかカラフルで、タピオカと違って食べると味がするらしい。後は見た目がキレイで写真映えするみたいなのが人気を後押ししてる」
「ちょっとしたらこっちにも入荷するだろうか?」
「まぁ、現実世界からこっちに流行りの情報が拡散していけば自ずとはしていくと思うよ!」
響様はキラキラした目をこちらに向け、「ありがとう」と満面の笑みを浮かべた。
(ま、眩しい・・・)
「やったぜ!情報先取りだ!みんなに自慢してやろーっと」
子供のようにはしゃぐ響様を見て、私は思わず笑ってしまった。