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14、15

 春 ~桜の頃へ交わす想い~


 彼女は残念な方ですね。

 執着することの愚かさを知らないから苦しいのに決まっていますし、どうにもどうしようもいられないというものでしょう?

 この彼女をどう救えましょうか。

 この彼をどのように救えましょうか。


 全くもって、私にはわからない気持ちです。

「どれも同じようなものではありませんか?」

 しかし彼女の感覚を私が持ち合わせていないように、逆もまた然りと言ったようでした。

 どうやら私の質問の意味さえわかっていないといった様子です。

「いいのよ。もう、なんだって。いいのかもしれないわ。ええ、きっとね」

 私の問いがわかっているのか、そもそも私が隣にいるのを認識さえしていないのか、完全に酒にやられた様子で私と会話をしているという感じですらありません。

 つまりは、この私を無視しているということ。

 許せませんでした。許したくありませんでした。


 この私を無視するとは何様なのでしょう。

 腹立たしいだとか、それだけのことで片付けられる次元を超えた話でした。

「ねえ」

「何よ」

 声を掛けた私に、返事はするもやはりよく認識していないように思えます。


 彼女は何を失うことを恐れているでもない。失いたくないものを、彼女は既に失ってしまっている。

 だから私に媚びる必要もなく、私に怯えつつ服従する必要もないというわけですか。

「こんな不快な地で独り夢を見ていることは楽しいですか?」

 ここで初めて、真に彼女は私を見たようです。

 気持ちが悪くなるほどジトっと見てから、彼女は不機嫌な顔で言ってくれます。

「虚構の人間関係に縋るよりは、よっぽど」

 真正面から私に喧嘩を売っているようでした。

 新しい感覚で、たまには悪くないかとも思えました。

 私は負けず嫌いですから、二度目はきっと楽しめないでしょうけどね。



 愛 ~それは偽りでも~


 ここまで愚かな人には、私は、言葉を授けるような気もなくなります。

 この人を私が嫌悪するのは、その理由の一つとして自己嫌悪が含まれているであろうこともわかりましたから、尚気に入りません。

 偽りでも構わないからとつい求めてしまうのは、いかにも愚かなことでしたし憐れなことであり、私が笑うことと同じようなところでありました。

 だからこの人の前にいますと、自分の愚かさが目に入ってしまうのです。

 決して認めたくないそれが、……それは、耐えられることではありませんでした。


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