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12-1


 夢大陸 ~届かない平安を求めて~


 一緒にいられなかったはずの大切な人との間に隔たっていた壁が全てなくなって、望んでも叶わなかったものが全て叶えられようとしている。

 何によっても現実で叶えられなかったものが、どうしたってここでは叶えられるのだ。

 みんなが幸せになれる素敵な永遠の世界なのだ。

 それはありえなかったものなのに、絶対にここでは得られるのだ。


 身分違いの僕と君が一緒にいられるように、この人たちも一緒にいられなかったのだけど、ここでは一緒にいられるものなのだ。

 この人たちは二人とも身分が高いようだけれど、それでも僕たちとは別の障害を持っているようだった。

「歌を勉強しているのですってよ。得意なのですから、教えて差し上げたら?」

 顔を扇子で覆い隠した、いかにも美しく、身分も高そうな女性が揶揄うように男性に語り掛ける。

「教えるだなんて上から目線な。得意だって言ってくださるのは嬉しいですけれど、あんまり言われると照れますし、そもそも笑われているようとすら思えてしまいますよ」

「そんなことするはずないではありませんか。お得意なのだなと思っているのは事実ですよ。これでも記憶なのに、残念なほどに歌が苦手な私ですからね」

 二人のやり取りは穏やかで、いかにも想い合っている幸せな二人に思えた。


 もしこの人が歌詠みの名手なら、教えてもらいたいと思った。

「そもそも、心に思ったことをそのまま詠み上げるから素敵なのですし、その人の個性が出て重みが増すのでしょう? 人に道を教わるようなものだとは思いませんし、教わるべきだとは思えないような人でもあるのですよ。まあ、教えてくれと頼まれましたら、それはお応えしますけれども」

 こう言っているのを聞いては、頼むような気はしない。

「新都は素敵なようで、ちょっぴり寂しいところなのね。身分なんてくだらないもので、差は更に深まってしまっているように感じられるわ」

 それから君は歌を詠もうとしたのか、「しろたへの」とだけ言ってから、黙ってしまった。


 君ははにかむ。

 そうして君は視線を落とす。

「歌が得意な人の前でなんて詠みたくないわ。それに、口に出してしまうのもなんだか惜しいわね。ちょっと、もったいないように思えてしまうの」

 何を言っているのか、君と同じく雅に見えるこの二人にはわかったのだろうか。

「その気持ちはわかります。正解を作りたくないという思いと同じような」

「ええ、そうなの。芸術の面においては、そういうものであるべきかしらと思うのよ。それが私だと示すときならば一つの解を自ら見せたくもなるけれど、映すのが私の心であれば、人それぞれの観点で何より素敵な想像に任せて見たくなるの」

 話を聞いた上で僕にはやはりわからないので、共感した様子で頷き合う男性と君との姿は、都人への憧れを大きくさせた。

 訓練して僕がこうなれるとは思えなかった。



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