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 忠犬 ~奈良の主はだぁれ?~


 何を言おうとしていてのメッセージであるのか僕には理解ができない。

 平等というまだ知らない何かが壊されて、奪われた先の世界でのことを僕が認識するというのは、そうして理解するというのは中々に難しいことであった。

 だから賢い判断というのもよくわかるようなことはありえようもなかった。


 どこかに奈良という場所があって、それはつまり、幸せの場所というようなことなのだろうか。

 人々が集まって形成された楽園が、奈良というものなのだろうか。

「わがね。わかりゃよに言っでくれんべがな」

 思わず呟いてしまった僕の声で、漸く僕と君との存在を認識したというように女性は歩み寄ってきた。

「どなただか存じ上げませんけれど、随分とみすぼらしい格好ですのね。お二人とも揃って田舎者なようで、お似合いといえばお似合いですけれど、そこまで訛りがひどいとなると滑稽ですらありませんわね。何をどのような無様さで懇願したところで、穢れを齎しそうなところですもの、奈良には招き入れたいと思えませんよ。お二人のような方は」

 怒涛のように話すものだから聞き取れなかったけれど、悪口のようなことを言っているのであろうことはわかった。


 全てを懸けて僕が飾り立てたはずの君よりも更に豪勢な姿であるものだから、派手で煌びやかな姿であるものだから、よっぽど彼女が立派な人であろうことはなんとなく伝わるようだった。

 もしかしたら、神様が姿を変えて僕たちの前に現れてくれたのかもしれない。

 神様が人間の姿を持って僕たちにもその御姿が見えるようにしてくださったのかもしれない。

 もしそうなのだとしたら、どのようなお言葉を頂けたのか、ますます理解したい気持ちが沸き上がってきた。

 どれだけありがたいお言葉をくれていたのだろう。

 いや、僕みたいな奴には、神様から罰のお言葉が下っていたのかもしれない。

 それだったとしても覚悟をして僕は神様のお言葉を理解したいと思った。


 けれど彼女はまた同じお言葉を授けてくださろうところはなかった。

「なだべが。もいげ、もいげ言でくりゃぁ」

 直接、頼み込んでみた。

「本当に聞き取れませんね。ふん、私と下々の人間とで住む世界が違うということはわかりましたわ。私を見られただけでも感謝なさい。それに、忠誠心は嫌いじゃありませんよ。傍にはいていただきたくありませんけれどね」

 輝きを撒き散らして彼女は去っていった。

 それはそれは輝かしいものであったから、本当に惹かれるところであった。

 君の方が綺麗には決まっているけれど、その派手さにはどうも立派だと思わざるを得ない。それが、それこそが服従の象徴と、カリスマ性というものなのだろうか。


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