9、10
死後 ~受け継いできた古墳~
死後にまで何かを遺そうというのは、よくわからない話だった。
僕が死んだ後でも君が美しく幸せでいてくれたなら。それは思うのだけれど、それは感じるのだけれど、ずっと先にまで遺したいとは思わない。
神様に魂を救ってもらうために、何かが必要なのはわかる。
魂を悪魔に食べられてしまわないために、何かが必要なのはわかるのだ。
けれどそれが大きな古墳などを作ることに繋がるのだろうか。
僕にはよくわからない感覚だった。
消えてしまうのは恐ろしいことかもしれない。自分がなくなってしまうのは、堪らなく怖いものに決まっている。
だけど君が幸せでいてくれるなら僕はそれで幸せだ。
もし僕が死んでしまっているのだとしても、それは幸せだ。
だから、よく、わからなかった。
夢 ~遥か遠く飛鳥~
もし僕が君に会えなくなってしまったなら、それはどれだけ辛いことだろう。
身分だとか、都だとか、そういうのはよくわからないのだけれど、集落にはそういったものがあるのだろう。
それなら集落なんて参加しなければいいって思うにしても、そういうわけにもいかないのだろう。
彼女も協力してくれないのでは、そういうわけにはいかないものね。
会話をしようにも会いに行けないのだから、相談もできないんだったら、彼女が会いに来てくれるわけもなくて。
だから、つまり、頭がグルグルして来るけれど、とにかく無理だってことだ。
どうしたって彼女と会う手段は見つからないのだろう。
そんな理由で僕は君を奪われてしまっては耐えられない。
君のことを集落なんかには渡さない。これは徹底しないといけなそうだ。
謎の制度だとは思っていたけれど、集落がそうも不自由なものだとまでは知らなかった。
大勢で暮らすには決まりが必要。
けれどそんな非道な決まりはどうして必要となったのだろう。
「一緒にいでくれんじゃ生きちゃいげねべな。こでねどいかんべ」
僕の言葉にどこか哀しげに君は笑ったように見えた。
「そげなごと言われちゃっとも辛かんべ。一緒にいだんじゃがら、いだかと思うんは一緒だっぺよ」
君からもそんなことを言ってくれるだとは思いもしなかった。
こんな幸せも、会えないのではないというわけだ。
一緒にいられないのでは、一緒にいたいと笑い合うこともできない。
一緒にいることが、一緒にいられないことが? どれが何で、どうだとも、一緒にいられないのではいられないのだ。
それは何よりも辛いことであるように僕は思う。
僕にはそう思えるのだ。
……君もそう思ってくれていたら嬉しい。
こんな幸せも、僕が幸せであるからだ。




