8~10
恐怖 ~強くなれずに弥生の時を~
「だれだって、怖いことばかりですのよ。外へ出て戦って笑えば、きっと強くなれるでしょうし、英雄になってなれますわ。一度は挫けた私ですから、きっとそう言う権利があると思いますの」
私のことを励ましてくれた方々はこういう気持ちだったのかしら。
声を掛けても届くときには歪んでいるということも私にはわかる。
だって私もそうだったから。
ここまで私が素直になれる日が来るなんて思わなかったわ。
「強要されるとかえって腹立たしくって、悔しくって、もう無理って思うのですわよね。今、わかったようなことを言うなって思っていますでしょ? 鬱陶しいおばさんでごめんなさいね」
私は明るく笑えるようになったのよ。
こうして陽気な私なら、神様も許してくれるのかしら?
……今はもう一人でも大丈夫だけれど、あの人が私を迎えに来てくれたら、思い出したよって、ごめんねって抱き締めてくれたら、それほど素敵なことはないわ。
まだ希望してしまっているところもあるけれど、そうじゃなくちゃいけないという私ではない。
この気持ちをわかってくれたら、明るい気持ちになれるんだけど、私だって年を取るまでわかりやしなかったのだもの。
わかってくれたらいいな。
ああ本当に、こんなに私がお節介になるなんて思ってもなかったわ。
死後 ~受け継いできた古墳~
権力なんてね。目立ちたいだなんてね。
そう思うことは素敵だと思うわ。そう思う人がいるのは、知っているしわかっているわ。
最初から私が恵まれすぎちゃっていたせいかしらね。
生きているうちに死後の心配をするだとか、自分が知ることのない遠い未来の心配をするだとか、そういう感覚が私にはないのよね。
生まれ変わってあの人が私を見つけ出してくれるなら、別なのかもしれないけれどね。
夢 ~遥か遠く飛鳥~
ロミオとジュリエット、ね。
見たことがないわけではない気がしないでもない。
演劇に興味がある方ではなかったけれど、シェイクスピアは見せてもらったような気がするのよね。
その切なさは私にわかる切なさではない。
想い合っていて素敵ね、死後の世界で結ばれるといいわね、そんな程度の考えが漏れてしまいそうだわ。
最低な私は残っているの。