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春 ~桜の頃へ交わす想い~
私「関係ある話かどうかはわかりませんけど、ちょっとお願いがあるんで言いますね」
僕「急にどうしたんです!」
僕「(あいつの記憶がなくなってから、随分と積極的になった気がする。一方的にあいつに言い寄られて、照れ笑いしている美人だったのが、今では完全に明るく笑顔を振りまくエンジェルだ。本当に完敗、乾杯したくなるほどの完敗だ)」
私「私、桜を見に行きたいと思いまして」
僕「でもどうして僕に言うのです。一緒に行きたい相手は、あいつなのではありませんか?」
俺「そこ! 何を話しているのですかな」
僕「デートの約束をしようというのです。何を勘違いしているのか知らないけれど、君なんかのためだけに存在するこの美男子ではないのでね!」
俺「俺の恋人だろどう考えたって。あとついでに言うけど、思い出したから、お前のことも思い出してやったから。恋に敗れた我が友人や」
僕「(マジかよ。すり替えは効かないってこと? 恋のライバル設定を植え付けておこうと思ったのに、思ったよりも記憶を取り戻すのが早かったな)」
俺「チャンスだと思っていたようだが、もう終わりだ。残念だったな」
私「え、本当?」
俺「ああ、本当だ」
私「じゃあちゃんと私が男だってわかってる?」
俺「それはわからないな」
私「……本当だ。私の知っているあなただね」
僕「いやどういうことだよ」
愛 ~それは偽りでも~
僕「偽りの愛なんてものが存在するものか。憐れみで注がれた愛など、何が嬉しいものか。いらない、そんなものはいらない、だけど真実なんてものもいらない」
俺「もっと素敵な愛を見付けてくれ。恋人は譲ってやれないが、友人としてそうは思う」
僕「友人面をするな。そうやってまっすぐで優しいところくらい、僕も知っている。僕が見てきた彼の姿はいつだって君越しだったのだし、ずっと前から君のことは知っているからね」
俺「そうか。そうか、すまないな」
僕「謝るんじゃないよ。本当に恨めしい、憎い奴だな」
私「なんの話をしているんですか?」
俺「友の話だ」
僕「失恋話です」
私「偉そうなことを言ってすみません。けどね、愛は捧げた分だけ返ってくる、と、思いますよ」
僕「だといいですね」
俺「本当にすまんな」




