13
距離 ~背負う鎌倉の夢の夜に~
僕「お美しい方ですね。男らしくもあるのに」
兄「ありがとう。身嗜みには気を遣っているものだから、そう言われると嬉しい」
私「肌や髪も綺麗ですから、相当お手入れをしているでしょう?」
兄「それほどでもないさ。接客業だから礼儀程度には手入れもしているが、外面を着飾るのがほとんどだから、肌や髪などはそこまで……」
私「それでその綺麗さですか。羨ましいですよ」
僕「君もき――」
俺「お前も綺麗じゃん」
僕「(こっちが先に言おうとしたんですけどぉお!)」
私「え、ちょっと、いきなりそういうのは止めて。恥ずかしいじゃない」
弟「その方々はどなたなのでしょう……。お兄ちゃんはまた、何かをなさろうとしているのですか?」
兄「いや、そういうわけではないよ。会おうという企画なので会っているだけ、話をしているだけだ。中々会わないような人たちであるから、話していて楽しいものだ。可愛い弟と会わせることには、相変わらず不安は残るけれど、それでも無理に閉じ込めておく気にはなれないくらいには、素敵な人たちだと思う」
弟「そう、ですか」
私「あっ、弟さんですか。お兄さんとは違って、可愛らしい方ですね。どちらかというと、お兄さんは綺麗系だと思うので、また違うなぁと」
弟「綺麗な人。お兄ちゃんと同じくらい綺麗な男の人、初めて見ました」
兄「待って、綺麗な女の人はどうなの? そういえば、恋バナとか聞いたことがないな。お兄ちゃんには内緒なのか」
弟「えっ、いえ、別に、そういうわけじゃ……」
兄「彼女とかの話、どうなんだ。いつまでも子どもだというわけでもないのだし、いくら私が自覚ありなほど過保護にしているかといって、彼女の一人や二人、三人や六人くらいいるのだろう」
弟「なぜ四、五の選択肢はなかったのでしょう」
兄「四人か五人なのか」
弟「ちゃんと一人です!」
兄「…………やっぱりいるのか」
俺「娘の恋人に会った父親のショックの受けようだな」
私「でも、そういう状態なんじゃないの? あなただって、親友の私に恋人ができたらショックを受けるでしょ?」
俺「それは違う。ショックとかじゃなくて、それはシンプルに、……ショックか。ショックだな。本当にショックだな。だけどそれは違うだろ」
私「嫉妬しちゃう? それとも心配してくれる?」
俺「心配なんてするものか。それより前にまず最初に奪い返すに決まってるだろ」
私「すっかり親友だって思い込んでたくせに、ばーか」




