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夢 ~遥か遠く飛鳥~
僕「手の届かない人、夢の中でしか触れられない人、どんなに欲してもどんなに求めても僕のものにはならない、僕に微笑んではくれない、僕を愛してはくれない、そんな人。希望のない圧倒的片想いの苦しさは、何に例えられるものでもありませんよね。それは大袈裟に見えて、そうでもない苦しみなのですよね」
男「祈りで叶うものものでないのが苦しいんだよな」
僕「自分の力不足であることも間違えないのだから、悔しいですよね」
男「そう本当に! 運命にも選ばれていなければ、恋人に選ばれない理由もある。勝ち目がないと思い知らされるときほど苦しいことはない」
僕「そうですよね、本当に」
僕「あいつは、悔しいけれど男らしくてかっこよくて、あの人を守っている。あの人を守っているんだ。あの人を見事に甘やかして、それでも大丈夫なほどにあいつはあの人を愛情で包み込めている。あの器の大きさが、僕にあるとも思えない」
男「都人はだれも雅で、読み書きができるこてゃ当然として、いろいろと凝らした歌を即座に詠める」
男「手が届かない。悔しい、惜しい、夢でもいいからまた会いたい」
僕「夢で会えたなら、夢の中でも一緒にいられたなら、それでも十分だと途中で思えてしまうのですよね。目が覚めたとき、ひどくがっかりするのです。あの人がいない現実に絶望するのです」
男「夢のまた夢の話だとわかっていながら、現実であれと望んでしまう」
僕「期待したところで、信じたところで、夢見たところで、傷付くばかりの現実を何度も押し付けられるだけですのにね」
男「本当に、本当にね。それほど苦しいことはないというものだ」
僕「何度も何度も繰り返し現実を再認識させられて苦しむのだから、馬鹿らしいですよね」
男「ああ、本当にな」
私「ふふっ、なんだかとっても意気投合していて素敵だね」
俺「だな。何を言っているんだか俺にはさっぱりわからないが」
私「夢がなんとかとか言っていたから、夢や希望の話をしているんじゃなあい? 私たちも混ぜてもらおうかとも思うけど、せっかく盛り上がっているところじゃ悪いかな」
俺「それに、ちょっと嫉妬しそう。親友だと思っていたから、嫉妬心は抑えなければいけないと思ったけれど、そうでないなら抑えなくてもいいよな。嫉妬、するから」
私「束縛?」
俺「そう、束縛だ。束縛彼氏は嫌いか?」
私「愛情とも取れるね。自由よりも愛がほしい、空よりも安全な鳥籠にいたい、だから私は問題ないよ。あなたがもう一度私を認識してくれただけで、満足なくらいだもの」
僕「(相変わらず見せ付けてくれるな!)」




