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夜空 ~それを飾るもの~
綺麗な月を見ていたら、全てを忘れられるのでしょう。
それに月に照らされてダンスを踊ったなら、もう一度あの人が手を取ってくれるかもしれないし。
今の私なら吸い込まれそうなくらいの月に、手を伸ばせるくらい立ち直れていると思うのよね。
今までなんとも思ってなかったんだけど、一気に月が好きになった感じがするわ。
あの人と一緒に月を見たら、「月が綺麗ですね」なんて言ってくれるのかしら。
元よりあの人に「I love you.」は似合わないけどね。
想像するといつも悲しくなってたけど、あの人のことが思い出になってきた証拠なのかな。
ちょっとだけあの人のことを想うと幸せになれるようになったわ。
虹色 ~濁ってしまった色~
そうね。すっかり私は濁ってしまっていた。そうかもしれない。
だけど今ならもうやり直すことはできると思えるわ。
あの人と一緒に私もリセットされるべきだった。それにはちょっとばかり、私は遅れてしまったけれど、リセットしようって決めたの。
濁ってしまっていた私にはちょうどいいわ。
春佳さんと一緒に過ごせたことが私の大切な思い出。
それで幸せに甘えて私は汚れてしまったの。
やり直すチャンスを与えてもらえたんだもの。新たな人生を謳歌するとしましょ。
今度こそ濁ってしまわないように、好きな色を探さないとね。
来世 ~縄文の恋心~
私ももう結構な年だし、両親を亡くして、一人で仕事をして、一人で生きていくようになってから何年もしたわ。
あの人のことはもう本当に素敵な夢。
二十代の間だけ、特別な夢が見られていたの。
若さゆえの魔法みたいなものね。
昭和が終わって、新しい時代がやってきて、西暦も大きな変化をしたわ。
なんてったって二千年だものね。
去年、世界が終わるなんて本気で私は信じたものだけれど、世紀末なんてなんでもないものね。
「記憶というのは素敵なものですわよね。記憶があれば、体が朽ちていようとも二人は結ばれ合う、求め合う、満たされ合うというものですわ」
「んだんだ、前世の契りってんばすんげ。体は一旦二人とも死んでんに、んだが二人とも引き寄せ合っで、前世で契ったって覚えとったんじゃ。おでたっちゃいうもんじゃ」
正直、私には方言というものに馴染みがないから、聞き取れない。
それでも好意を寄せてくれていることが私にはわかった。
いいえ、この人たちには悪意というものがないんだわ。
見習わなくちゃいけないわね。
若い頃の私はこんなに素直じゃなかった。
若い二人はとっても素敵、とっても幸せ。
そして今の私はもう綺麗だから、妬みで終焉なんて望まないわ。




