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 月 ~月がまっすぐに光るとき~


 月の魔力というのは、存外、強力なものらしい。

 僕が桜に魅せられたように、僕と同じように桜に魅せられた人が多数いたように、月というのも同じ種の魔力を持っているということだろう。

 それは怪しく、他人を間違えなく惑わせるような力なのだろう。


 美しい月を僕は見上げたことがあったろうか。

 あったはずだ。あったはずだけれど、僕が月ではなくて桜に魅せられることになったのは、彼女がどうにも桜らしかったからか。

 華やかというような表現は彼女に適しているとは思わないのだけれども、僕にとっての彼女の姿は桜といったそれだった。

 桜の精なのだ。

 あとは、桜の化身という言葉を聞いた、あれはまさに、本当に彼女そのものだ。


 桜が人の姿を持って僕の前に現れてくれたとしか思えないほど、彼女は桜らしかった。

 理由はない。根拠もない。

 それなのに、直感的に僕はそう思わされることになっていたのだ。

 僕が気が付かない間に、僕が知らない間に、桜というものを彼女として見てしまっていたのかもしれない。またはそれは反対なのか。

 幻想的な月の魔力を味わいたいとも思うけれど、十分すぎるほどに桜に魅せられた僕には無理なことか。


 僕は桜派だったのかな。

 月に照らされた夜桜の絶景に魅せられたなら、それは強力な魔力を持っているのだろうな。

 けれど月と桜の方向性は近いしいように見えて、随分と違っているようにも見える。

 重ね合わせたら、それはまた別種の魔力を持って、人を惑わすんだというようにも思える。

「今度、お月見でもする?」

「する! パパと一緒にお月さま見たい!」

 桜の名所とかならば、普段は外出しない僕なんかも行くものだけれど、月見にも名所やらがあるのだろうか。

 月と合わせて見ると魅力的と言ったことになるのか。


 家から見たって、月は綺麗か……。

 月はどこから見ても見える。どこから見ても綺麗だ。

 それなら家から想桜ちゃんと、二人きりで二人だけの月を楽しもうか。

 二人きりでいれば、彼女も会いに来やすいだろうし。



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