29、30
初心 ~初めてだから~
性別 ~愛に理由なんて必要ないわ。夢にも、欲望にも、同じことよ~
「女性というのは、やはり強いものですよね」
「そんなことないわよ。愛してるから、愛してるって言うだけなの。愛してるから、それを他の人になんて邪魔させないし、邪魔されないってだけ」
即答された。
愛しているから、愛しているって言う。
愛しているから、他の人に邪魔させない。邪魔されない。
僕だってあえて馴染もうとはしなかったし、彼女と一緒にいたいと思うばかりで、それを批判されたからってどうにかなりそうにもない。
世間の声なんて気にせず、彼女といただろう。
そうする、そうするからって、気にしないでいられるだろうか。
言葉にすることは間違えなくできるけれど、それくらいの強さは持ち合わせているにしても、心からそう思える強さを持っているとは感じない。
だけど彼女ならそう思えているのだろうか。
彼女は覚悟というものを持っていたのだろうから、きっとそうして言えるのだろうね。
「いえ、強いですよ。僕は自分で流されない方だと思っていますし、そう傷付く方でもないと思っているのですけれど、そうもまでは強くあれないでしょう」
僕に男性は声を掛けようか迷っているようだった。
想桜ちゃんが男性をつんつんと突く。
それに微笑んで、まだ迷いながらも声を出すつもりになったらしい。
「彼女は本当に強い。好きという気持ちにも、女性になりたいという憧れにも、誇りを持っているんだ。だから他人の目なんて気にしない。僕みたいに、悩んで、会話さえも恐れて、他人ばかりに気を配っているようじゃない」
隣にいてくれる愛おしい人が、あんまりにも立派で輝いているものだから、自分がなんだかつまらない人間に思えてしまうのだ。苦しくなるのだ。
意味のない考えだとわかっていても尚、苦しい。
その気持ちならば、僕もわかるところだった。
大切な人が、あんまりにも偉大だから……。
「だけど、それでも、彼女を愛すると決めたのでしょう? それを決心できるあたり、今だって迷いこそすれこうして話してくださいましたし、結局のところの強さは持っているわけではありませんか。慎重さと強さをどちらも持っており、他に何がいるというのです?」
「そうよ。私のこと受け入れてくれて、愛してくれるって言ってくれたじゃない。本当なら、私とは違ってあなたは私が男だったことを認識してしまっているんだから、世間から苛まれることを意識もしたはずだわ。それでもあなたは愛すると言ってくれた」
僕と女性の言葉を聞いて、男性ははにかんだ。
「僕は同性愛者ではないけれど、君が男性のままであったとしても、世間から苛まれるというのはおかしな話だね。今はそれが苦しいよ」




