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13、14



 距離 ~背負う鎌倉の夢の夜に~


 兄弟と言ったものの感覚が僕にはわからない。

 けれそれはとても近しい存在で、とても大切な存在で、特に彼らにとってはそうだったのだろうと思う。

 家族でも妻や親、子どもとは違っている。近くにいても友人ともまた違う。

「いらっしゃいませ。あ、今回の企画でご一緒させていただく……お話は伺っております。兄弟でとのことでしたが、今日は私だけではならないでしょうか? 弟は今、いろいろありまして、家から出られない状況なのです。ですから私だけ、ご勘弁ください」

 お兄さんが花の咲くような美しい笑顔で、媚びるような甘い笑顔で、躊躇いと後悔が混ざったような曇った笑顔で、彼は僕を出迎えてくれた。


 僕が信頼ならないから、弟さんを会わせられないというのだろう。

 それならそれで構わないし、無理に引きずり出させようという気にはなれなかった。

 むしろ僕もその過剰に心配する気持ちに共感すらあったのだ。

 兄弟の感覚はわからないと思ったけれど、このお兄さんが弟さんに向けている感情というのは、僕が想桜ちゃんに向けている感情に近いものなのではないだろうか。

 もし想桜ちゃんが何者かの悪意に曝されたとき、絶対に次がないようにと、僕も過剰に想桜ちゃんを保護しようとするだろう。

 彼女自身を縛り付けて、自由を奪ってしまうくらいに過剰に。


 何があっても僕は想桜ちゃんを守ろうと誓った。その誓いは一生変わらない。

 守れなかったとしたら、そんなことは想像もしたくない。

 しかしその先にあるのが、僕も彼と同じ道なのだろうと思えるのだ。

「うちの店の自慢の菓子を持って参りましたから、よろしかったらお食べください」

 美味しそうで高級そうな和菓子を彼は差し出してくれた。

 その所作の一つ一つまでが美しく見えて、ああ、美人というのはこういう人のことを言うのだろうと思えた。

 見事な女形の芝居を見せられている気分だった。



 春 ~桜の頃へ交わす想い~


 桜に魅せられて、狂わされている人は僕だけではないのだ。僕たちだけではないのだ。

 思っているよりもたくさんいるようだ。

 気分が悪くなりそうなくらいに、震え出しそうなくらいに桜は綺麗だ。

 桜が綺麗なのは、桜の樹の下に罪が眠っているから。毒々しい血を吸っているのでなければ、桜の美しさというのは信じられない奇妙なものなのだ。

 理解のできない話ではなかった。

 わけのわからない理論に思えたが、同じく桜に酔い痴れている愚かな僕には理解ができてしまっていたのだ。

 桜の魔力だともいえるだろう。それは、恐ろしいものだった。


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