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性別 ~愛に理由なんて必要ないわ。夢にも、欲望にも、同じことよ~
ぼ「禁断の愛というのは物語的で魅力的なものではありませんか。いつだって主人公というのは試練に襲われ悲劇的に終わるものです」
わ「現代の目から見ると、本当は禁断と言ってしまうのもよろしくないのでしょう。現代はそういう時代なのでしょう」
ぼ「そういう時代、ですか。そう言われると、今行こうとしている場所が、今から目指している場所なのに、望ましくないもののようですね」
わ「そうは言っていません。けれどそちらが正しいとして同じ方向をして目指しているものは、どれも確実な正解とは言えないものでしょう?」
ぼ「確実な正解など、元よりどこにもないものです。それが絶対的に正しいというのなら、絶対という名でそれを押し付けている時点で、それは過ちというわけです」
ぼ「どのようなものであれ、絶対的に正しいというものはありません。絶対的に間違っているというものもありません。だれかがそれを正しいと思うのなら、だれかをそう思わせる理由があるのだから、それはそのだれかにとって正しいものとしてそこにあるものです」
わ「差別も、戦争も、迫害も?」
ぼ「英雄が人々を脅かす化け物を倒す物語は、現在でも人気があります。それは差別と何が違うというのでしょう。もし相手が自らの安全を奪うようなものであると思い込んでいる、そしてそれを思わせる節があったとしたらどうでしょう。戦争は参戦した国はどこも悪いのだというのならば、侵略された国にも最初から同じだけの罪があるというのなら、これに関しては何を言うでもないのかもしれませんが。迫害は差別の先にあるものでしょうが、被害者が加害者を退ける護身のために加害者になっているのです。どこからが加害者であり悪であるとだれが決めるというのです?」
わ「どこからが……」
ぼ「差別をしているように見える彼らは加害者であるからと差別するのでしょう? こちらの差別は正義であると、区別されるのですか?」
わ「でも勝手にわたしたちが平和が望まれるものであることを前提に話してしまっていることも、その前提の押し付けなのでしょう」
元々何の話をしていたかは忘れたまま、二人の議論は盛り上がっていく。




