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11、12



 忠犬 ~奈良の主はだぁれ?~


「自由って馬鹿らしいことではありませんかしら? 私に服従している方が、よっぽど楽ではありませんの?」

 当然のように女性は言う。

「苦労せずに生きることなど、何も楽しくないではありませんか。それに、平等についてのご意見は聞きましたけれど、専制君主には平等の欠片もありません。お気付きではありませんか? ご自身が、見えていないのですか?」

 彼女を失った恐怖で、彼女が教えてくれたことが見えなくなりそうだった。


 それを乗り越えた僕はなぜだか使命感を抱えていた。

 上から目線で世間知らず、なんでも理解した気になってしまうような僕が、またここで顔を出してしまっただけなのだろう。

 わかっている、自分でも認識しているんだけど、言っちゃうんだよね。

 人との交流が少ないから、そうなのだろうか。

 そうだから、他人との交流が少ないのだろうか。

「頭が悪いですのね。もう奈良に居場所はないと思ってくださいまし」

 この女性は僕よりも世間が見えていないように思える。

 世界が違う相手が交流することを目的とした作品であることを認識しなくちゃ。


 説明はあらすじのところで説明したつもりだったのだけれど、彼女は自分が一番だということで、それを読みもしなかったのだろう。

 支配をするのに情報がないとは、油断大敵という言葉を知らないらしいが、思ったままを口に出してしまおうとするところが僕が円満な人間関係を築けない理由だともわかっている。

 彼女と一緒にいる間は、いつだって彼女のことしか見ていなかったからマシだったろうけれど、彼女に出会う前や彼女が亡くなってからはひどいと自分でも思うからね。

「メタフィクションみたいなものです、この世界は。僕の知っている奈良とあなたが知っている奈良は違います、それに、そもそも僕は奈良に住んだこともありません。どこまでも自分の常識が通用すると思ってはいけません。あなたのターンに僕が呼ばれるかはまだわかりませんが、また会うことができたなら、そのときを楽しみにしています」

 もう会うことはないだろうという余裕からだろうか。

 そこまで言った僕は彼女に笑い掛けて立ち去った。



 夢大陸 ~届かない平安を求めて~


 輝くような笑顔の男性が二人、奥からもやって来たので三人だ。

 先にやってきた二人は手を繋いでいて、恋人だろうと思われる。

「桜の美しさに、魅せられたのですね。幸せが苦しくて、それでもその幸せを謳歌することが、楽しくてならないのでしょう」

 邪魔されることのない幸せの世界のやって来たというようなレベルでの喜びようだった。

 彼らの笑顔に、自然と僕も、そして想桜ちゃんも笑顔となっていた。



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