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夢大陸 ~届かない平安を求めて~
顔を隠した雅な男性が優雅な所作で声をかけてくれる。
「呪いを身に受ける立場になくても、理不尽に襲われるところなのですね。運が悪く、鬼につけられたとかなのでしょうか。私は捕らわれの身とも呼べる立場になってより後、気分が悪くなることが多くなりました。だれかが私を呪っているのは間違いないことでしょう。けれどそういうようなわけでもなくて、恨まれる謂れも覚えもないのに、幼い頃から苦しめられ続けていたのでしょう?」
病を鬼や呪いのせいだと思っているようなことなのだろう。僕の考えと感覚としては医学に頼りきりなわけだから考えたこともなかったけれど、もしかしたら本当に鬼によって僕の身体はやられてしまっているというわけなのかもしれない。
なんとなく妖怪の類を信じるようなことは幼稚で、医学は信頼を置けるものとして僕なんかは思ってしまっているところだが、僕が信じている事実が真実であり正しいものだとは言い切れない。
「無自覚のうちに、恨まれてしまっていたのでしょうかね。例えば親とか、面倒をかける僕のことを呪い殺したいほどに嫌っていたのかもしれません。親なら子を憎みはしないとは言いますけれど、僕だって思春期の子どもではなくもうそれなりに大人だというのに、未だに親が僕のことを愛していたとは思えないのですよ。僕は病院で一人で過ごす時間の寂しさから当たっているだけで、忙しかっただろうことくらい想像できるはずですのに。年だけ大人になっても、やはり子を持たない僕に親の気持ちなんて理解できない、そうなのでしょうね」
この中のだれも子を持ってはいないのに、わざわざこのようなことを言う僕はやはり性格が悪いものだ。
僕は病名があって、だからこそ長生きができないこともわかっていた上で、君と幸せな時間を過ごしていた。
何がどうなるかわからないようなものでもないのだし、それこそ呪いがどうのというようなものでもない。
立場が悪くなってから気分が悪くなることが多くなったと言っているわけなのだから、この人は僕の感覚の中で言えば精神病のようなことなのだろうか。
ストレスだって感じているだろうし、不安にだってなるだろうし、いろいろなものを失ったショックだって受け止めきれるようなものではないだろう。
見たところ若い人であるようだから、尚更、輝かしい将来がいきなり奪われて平然と強く生きていけるようなはずもない。
カウンセリングを受けたり薬を使ったりすることができないのならば、本人の思い込みで精神病は改善されることもあるだろうから、呪詛的な問題としてもお祓いや出家という道があったはずだ。
それなのに耐え続けたこの人は、本能よりも強くあれるほどの意思を持って今笑えているのだろう。




