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忠犬 ~奈良の主はだぁれ?~
これもまた偏見であるのだとはわかっているけれど、僕は京都府民のようなことを彼女に言ってしまったことを覚えている。
「奈良にお越しいただいたことはございますの?」
捨て台詞を忘れられているというのは思ったよりも恥ずかしいもので、完全に初対面というようだった。
「奈良はありません」
僕はそう答えたけれど、奈良はではなく奈良以外もないというものだ。
そして僕の回答に目を丸くしたのはこの女性だけでなく君もまたそうだった。
まさか僕が旅行に行っていないことくらい知っているはずだろうに、どうして君が驚いているのかと思っていれば、その答えはすぐに出るのであった。
「あれ? 修学旅行、自由行動で外に出られなかったのだと話していたではありませんか。行けはしたのでしょう? 遠くへ行けたのは中学の修学旅行だけだって話していましたよね? だから、ちゃんと行けたのだとばかり……」
君が何をどう勘違いしているのかは僕にはそれですぐにわかった。
「中学の修学旅行、東京良の主はだぁれ?~
これもまた偏見であるのだとはわかっているけれど、僕は京都府民のようなことを彼女に言ってしまったことを覚えている。
「奈良にお越しいただいたことはございますの?」
捨て台詞を忘れられているというのは思ったよりも恥ずかしいもので、完全に初対面というようだった。
「奈良はありません」
僕はそう答えたけれど、奈良はではなく奈良以外もないというものだ。
そして僕の回答に目を丸くしたのはこの女性だけでなく君もまたそうだった。
まさか僕が旅行に行っていないことくらい知っているはずだろうに、どうして君が驚いているのかと思っていれば、その答えはすぐに出るのであった。
「あれ? 修学旅行、自由行動で外に出られなかったのだと話していたではありませんか。行けはしたのでしょう? 遠くへ行けたのは中学の修学旅行だけだって話していましたよね? だから、ちゃんと行けたのだとばかり……」
君が何をどう勘違いしているのかは僕にはそれですぐにわかった。
「中学の修学旅行、東京だったのですよ。君は奈良へ行ったのですか?」
「はい、京都と奈良に行きました。そうか、東京だったんですね。修学旅行先、あの辺だと関東方面に行く方が多いのですかね」
「さあ、どうなんでしょう。聞いたことがないからわかりませんけど、半々くらいなんじゃないですか? 東京も大阪も同じくらいの距離なんですし」
すっかり僕と君とで盛り上がってしまっていたものだから、不快だったのだろうか、女性はいつの間にか歩き去ってしまっていたようだった。




