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記憶喪失 ~一方通行の恋心~
恋心というものは、記憶喪失だなんてものに勝てるような心なのだろうか。
もう一度恋をするというような奇跡はあるのかもしれないけれど、現に僕は記憶をなくすどころか一度死んだとしても君にまた恋をするつもりであるのだから、それならわかるのだけれど失われた記憶を取り戻すようなことがあるものなのだろうか。
脳というところではなくて、精神からなるところであったというようなことだというわけか。
「僕はどうして君を忘れなかったのでしょうね」
心も体も僕はあんなにも弱かったのに、君のサポートがしっかりしていて心強かったおかげか、僕は精神的な病の症状を見せずに済んだ。
迫りくる死に怯える日も、生まれてから何を成してもいない自分の無意味さに嘆く日も、君がいてくれたから僕は死にたいなどとは願わずに済んだのだ。
死にたくないと、最期まで思うことができたのだ。
心を蝕まれてしまえば、生きていても生きてはいないようで、体が健康であったところで何ができるわけでもないのだ。
そう思えば体が蝕まれていったとはいえ、首から上はいつだって元気だったもので、景色を見たり話したりすることができたのだ。
何度だって僕は叫べる、僕は幸せであったと。
「あたしが忘れられたくなかったから、ですかね」
いつだって基本的に彼女は迷わないけれど、珍しく随分と悩んだ末の答えだった。
夜空 ~それを飾るもの~
星や月の美しさを知らないわけではないけれど、僕は基本的に夜よりも昼の方が好きだ。昼の方が、好きに決まっている。
夜になると君は家に帰ってしまう。
夜になると僕は一人になってしまう。
夜は僕と君を引き離すから、星は僕たちの間に輝くから、……嫌いだ。
虹色 ~濁ってしまった色~




