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6、7



 虹色 ~濁ってしまった色~


 どうしよう。泣けてくる。

 年齢のせいかな。僕はいつまでも若々しい、というか幼稚だとよく言われるものだから、こんなことを思うものだとは思ってもいなかったのだけれど、この涙脆さはそうなのではなかろうか。

 クレヨンで想桜ちゃんが描いてくれた僕のイラストを思い出してしまうんだ……。


 ああいう無邪気な子なら、様々な色を混ぜて虹色にできるのだろう。

 濁った色を作るのは当人が濁っているからだと僕は思う。

 だって想桜ちゃんはどこまでもピュアピュアなんだからね!

 どうしたって親バカになってしまうに決まっている、あの可愛さ、泣けてしまうものだろう。

 プレッシャーを与えてしまったり、重荷になってしまったりするようなことはしたくないのだけれど、想いが膨らんでしまうんだ。

 それこそ、桜が咲くたびに。



 来世 ~縄文の恋心~


 これは僕の癖だろう。

 つい、わかったようなことを言ってしまうのだ。


「愛おしい女性のためならば、自分の身などどうなっても構わないと思えてしまうものですよね。愛している、その強い気持ちで、他には何も見えなくなってしまうものですよね」

 想桜ちゃんの髪を撫でながら、僕は愛を捧げられ、挙句に恋人に死なれたのだという()()に声を掛けた。

 彼女は、僕に声を聞かせようとはしてくれなかった。


 何か彼女と彼の間で、無関係な僕などが知ってはいけない大切な約束が存在しているのだろう。二人だけの何かがあるのだろう。

 だから僕はそれには触れてはいけないものなのだと、気付かないふりをした。

 声が発せないわけでもないようだけれど、彼女は筆談だった。

『殿方というのは、そういうものなのですか』

 本当の彼女の話す言葉は、引き籠もり都会人には聞き取れないような訛りがあるのだという。

 それを聞いてみたい気持ちも僕にはあった。


 けれど大切な人との間の、大切な、それこそ大切な人のためだけに存在する声なのだとしたら、僕の興味のために不用意に穢してしまいたくはなかった。

 それだけでも傷の付く繊細なものだと思うと、口に出すことさえ憚られたのだ。

「人の愛というのは、それくらい恐ろしいものなのですよ。殿方というのはなどと仰いますが、女性はそういうことにはならないのですか? 生憎、愛おしい気持ちを抱えた人の想いはわかるつもりですが、それでも僕に女性の気持ちはわかりませんから」

 手元のメモ帳を一枚切り取ると、彼女は丁寧な文字で何かを書いて僕に渡してくれた。


『ありがとう』



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