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夢 ~遥か遠く飛鳥~
都人ですか。私は都へ行ったことはありませんし、貴族と会ったこともありません。
私がやってきたことは全て本から得た知識から、見よう見真似でしかないものでした。
「住んでいたことがあるのでしたら、都の話をお聞かせいただけませんか? 実際の都の暮らしというものを知りたいのです」
きっと私が知っている都とは違っているでしょうが、それでもこの女性は私が知っている都人の姿をしているものですから、そう遠いものではないと思って興味のままに私は動いてしまうのです。
この優雅な所作を、私も知りたいのでしょう。
女性が知らない男に顔を見せるようなことがあってはならないとのことでして、彼は彼で男同士何かを語らっているようです。
私は男もいるのに平気で外を歩く召使いよりも身分の低い女なのできちんと気にしておりませんでしたし、賊の集まりのような低俗な人々ばかりからなる彼の国ではそれが当たり前になっていました。
都から離れた地にある国では、どこもそんなものに違いありません。
本当は都だってそれくらいまでに零落れてしまっていたということだってあるかもしれません。
「都にいる頃も移動してからも、暮らしはそれほど変わりないわ。新しい都のことはよく知らないけれど、生活としてはそれほど変わらないのではないかしらね。だから都と言っても名前だけよ」
優雅な笑み。ゆったりとした口調。
きっと本人は気付いていないだろうところで、都で生まれ育った家族なのだということがわかります。伝わります。
真似事では決して真似できない、心というものがあるような気がしました。
「如何にぞや如何でも如何でも衣冠をば如何にも有れ如何にせむ吾が」
本物の方にお聞かせしていいものではなかったのでしょう。
私の歌を、女性はくすりと笑いました。
「まあ、面白い歌ね。素敵な感性だわ」
迷う様子もなく歌を書き記して、そうして私に差し出してくれるのです。
知識のない私にその文字を読むことはできませんでした。
自分たちで普通に使っている文字の他、私は読むことができないのです。私にそれほどの学はありませんでした。
けれどこれこそ貴族の方のものなのだと思うことができます。
内容もさぞ趣のあるものなのでしょう。
「ふふっ」
どうにかお上品に微笑んで、私は答えを濁すのでした。




