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死後 ~受け継いできた古墳~
1091は、呪いのようにあの少年に降りかかっているようでした。
その呪いは部外者ともいえる私にも適用されるものなようで、青と白で鳥がいるような気がする、世界中の人が呟きをするようなものがあるじゃないですか。そんな感じで、ちょっと一言というには長めですけれど、文字数制限が私に課されてしまっていたようなのです。
仕方がないので私は別の世界を見ながらも、解決しきれなかった先日の少年のことを想うしかありませんでした。
自分という存在がなかったことになってしまうのは、全て消えてしまうのは恐ろしいことです。
結局なくなってしまうものならば、なんのために戦っているのだろうと思うことは私にだってありました。
けれど彼のために何かを遺せるのならばそれで満足でしたし、私は私が思っていたよりもずっと長生きをしたものですから、全員に見せつけるように大きなものを遺そうとは思いもしなかったのでした。
全く共感ができないものなのです。
「そういう時代だった、としか言いようがありませんよね。儚さまでが武士の華、女の華というものでした。だから二人ともが自らを愛することができず、上手く死を恐れていることができなかったのです。死の間際には、私は臆病になっていたものですけれど」
全てが安定している状況であれば、それが失われることを恐れることができたのかもしれませんね。
そう思いながらも不思議なもので、私は今でも終わりを恐れていないのでした。
こんなにも幸せしかない穏やかな日々であるというのに、です。
後の世の頼みのなきを憂ふれや嬉しからねやねぶのとづるも
会話となるとつい否定的なことを言ってしまうか、煽りに煽って論破しようとしてしまうことでしょうから、私は書き残していきました。
話し掛けられる前に、たった三十一字の歌だけ置いて私は去ることを決めたのです。
これが唯一私にできることだったのです。




