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月 ~月がまっすぐに光るとき~
青い月が大きく輝けば、魔力が大きく高まるものなのだろうか。
満月は、いつだって幻想的な輝きを持っていて、悪魔のような力を秘めているとすらいえる。
それが更に大きくなるというのだから、その力に逆らえる人間など存在していないというものだろう。
月の力を怖いほど僕は知ってしまっている。だから確信できた。
まっすぐに光り輝く月というものを、怖いもの見たさのようなところも多少はあるかもしれないけれど、僕は見て見たいものだと思った。
どれほどの光で、その月は僕たちを惑わしてくれるのだろう。
いつだって満月は僕の気を狂わせる。
そんな月の本気というものを僕は見てみたかった。
月の持っている本来の力というものに、ひどく興味があったのだ。
あまりに僕は月というものに惹かれすぎていた。
太陽の魅力などわかりやしない僕には、月の魅力こそを最上とした。
「踊ろうぜ」
彼女の差し出した手を取って、僕は一歩を踏み出した。
手が触れて、足が前に出れば、自然とそれはダンスになっていた。
狂ってしまうほどに踊れた。踊った踊った。
狂おしいほどに笑えた。笑った笑った。
ああこれは、確かに月の持つ全力の魔術は強力なものだと思わされる。
完全に僕は狂わされてしまって、踊らないではいられなくなってしまうのだ。
踊らないではいられないのだから、本当に狂ってしまう。
神聖な力を持つ湖は、月の魔術を全て映して倍増させるのだという。
これほどの力を持った月光が反射して光を撒き散らしているとなれば、それはどれほどの力であることだろう。
人間たちなど何もかも存在ごと消えてしまうのは仕方のないことだとすら思えた。
このまま僕も消えてなくなってしまうとしても、それでもこの景色に吸い込まれるのならば構わない、そう思ってしまうまでに僕は狂わされている。
それが楽しくって堪らなかった。
彼女の手を取って僕は踊った。
月の光に抗うのではなく、月の力を浴びて強くなれるくらいの気分に浸って、狂ったように僕は踊った。狂ったようにではなく、狂っていたのだろう。
意外だったのは、僕と同じくらい彼女が狂っていたということだろうか。
手と手を握り合えば熱が伝わってきた。
生臭いものだったけれど、幻想的で神聖なものよりもかえって魅力的だ。
間違えなくそう思えるくらい、僕は狂っていたんだと思う。




