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絆 ~たとえ世界が違っていても、手を伸ばせば届くことを信じているから~  作者: ひなた
病弱軍師 ~桜の花のように美しく散ることを彼が望まないのなら~
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 大人 ~得ることで失うもの~


 私はほんの少しだって大人になるつもりがないのですから、気持ちを理解することはないのでしょう。

 大人になるというほど、歳を重ねることができなかったせいというものもありましょうか。

「長年思い続けるような強い気持ちを持っているのなら、どこかで行動に移していればどうにでもなっただろう。何もかもが上手くいくと思っているわけではないが、行動さえしないより、よっぽど素晴らしい結果を手に入れられるに決まっている」

 子どもらしい私の意見を、状況もわかっていない部外者のくせしてぶつけてしまうことを、私は避けました。

 彼は迷いなく思ったことを口にします。

 こういったところにどれだけ私が救われたことでしょう。こういったところが、どれだけの人を怒らせてきたことでしょう。

 交渉の場などでも彼はこの調子なのですから、私は何度も見て来ました。


 すぐには感情的にならないそれを大人の余裕であると呼ぶのか私には判断できかねますが、彼の言葉を咀嚼するように老爺はゆっくりと何度も頷きました。

 五十を過ぎるほどにまで長生きできたなら、私も同じ落ち着きを持っていられたのでしょうか。

 元々私は自らのことさえも他人事として考えているといわれるようなところですから、老婆になっていたとしたら私は悟りでも開けていたのでしょうか。

 どうなることで大人になったという変化を得られるのか、二十歳の私が最も大人な私であるのですから言えるはずがありません。

 子どもらしい私では。


 大人ならばどう答えるものでしょう。

 妥協を知ることを拒んだ私や彼にはわからないことで、その賢明さというものを待ちました。

「僕が動いてしまうことで、変わってしまう、失われてしまうものがあるとは思わないと」

 諦めなのか反論なのかわかりませんけれど、それが大人らしいということならば、やはり私はそんなものを受け入れたいとは思えませんでした。

 きっといつまでも彼が子どもであるから、私も子どもでいても構わないような心地でいるのでしょう。

「過去に縋っていたいのなら、あえて現実を知りたくないと恐れているのなら、そう臆病であるところを悪いとは思わない。仕方のない人なのだと、そういう人なのだと思うさ。だが、自分でそうありたいと望んでおきながら、心の中で答えの決まった迷いを続けているのが気に入らない。自分も、周囲の人も、大切な人も、だれもを不幸にするような感情としか思えない」

 こういうときの彼の言葉には容赦がないと思いました。


 私はそこまで言わないというか、そこまで考えることもありません。

 何もかもに真剣に向き合っている彼だからこそ出て来るような発想なのでしょう。

「言いすぎですよ。失礼でしょう」

 口では注意もしますけれど、私は彼に心酔しているからお仕えすると決めているわけで、彼の言葉に感心しているのでした。

「ご機嫌取りをする必要はないんだろ?」

「そうですけれど、わざわざ角を立てる必要はないでしょう」

 私は説得などしようとも思っていませんし、私に彼を説得することは決してできないことを知っています。

「いや、貴重な意見だよ。考えてみるとしよう」

 老爺は感情のない穏やかな声で告げます。それが大人の対応というものなのでしょう。

 やはり私には好きになれそうもありませんでした。


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