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大人 ~得ることで失うもの~
わたしはおとなになってしまったことで、なにを……。
知識と引き換えに純粋な心が失われてしまっている、というような話ですよね。そういうわけでもないのでしょうか?
純情な恋心が、みたいな話だったと思うのですけれど。
読んでもらった物語の中ではそうであるようにわたしには思われましたが、やはり文字には密かに込められた何かがあるのでしょうか。
そもそもわたしは本を読んでいないのですから、国語力というのは欠けていることでしょう。
しかしそう考えてみるとやはり深いものがありそうですね。
たくさんの文字を辿って本と会話をするような、そんなあなたならば、文字から伝わる感情というのも読み取れるのでしょうか。
大人になるというものの真意も、掴み取れるのでしょうか。
わたしとは違った見方で、様々な見方で、世界を見ていられるのでしょうか。
見事に大人を演じていられるのでしょうか。
人から見て大人だと思われるような、立派な大人が大人像として存在しているのだとは思いません。
けれどわたしは、ここで言われている話の問題ではなくて、大人というもの自体に引っ掛かるところがあるような気がしました。
どうなったらおとなになることでしょう。
見た目ではわからないけれど、不便を感じているあなたのような方を見て、気付いて声を掛けてあげられる。まあ、実際は文字通り声を掛けたところでは、あなたにはわからないわけですけれど。
見た目ではわからないけれど、不便を感じているわたしのような人を見て、気付いて声を掛けてくれる。
そういった人が、大人というものなのでしょうかね。
わたしはそう思います。
わたしとあなたの通訳をしてくれる、あの方なんて特にそうでしょう。
わたしはそう思います。
では、大人になって得るものというのは、他者への目というようなものでしょうか。
失うものというのは、やはり欲望に正直で無垢で素直な心というようなことでしょうか。
わたしは、そう思いました。




