26
不自由 ~動かなくなっていく~
体が動かなくなっていってしまうというのは、少しずつ病の信仰を自分で感じるというのは、どれだけ恐ろしく苦しいことでしょうか。
当人ではないわたしには、その気持ちを理解することはできません。
他人の気持ちを理解するだなんて人は、本当はいないのでしょう。
わたしにはわかりません。
「もしも、重い病にわたしが臥してしまって、もう会えなくなるのだというようなことになったら、どうしますか? あと一年、あと一年の命なのだと知ってしまって、徐々に別れの瞬間が近付いて来ていることを知ることになってしまったら、どうしますか?」
わたしが質問をしたところで、あなたにはわかりません。
「伝えないでください。わからなくて、いいのです」
こんなことをされてしまったら、わたしとしても嫌なことでしょうね。
あなたがこんな哀しいことを文字にして、それでも、それはわたしにはわからなくて、そんな辛さと言ったらないことでしょう。
もちろん、実際に残された時間がほとんどないようなことを言われてしまうようなこととは、わけが違います。
そんな恐怖というほどの恐怖はないと思いますけれど、けれど辛いのは決まっています。
「伝えさせてください。自分の文字で、この下手な字で、伝えたいのです」
『わたしがいなくなったら、』
『いなくなりません』
一生懸命平仮名で書いていたというところで、わたしの文字の下にあなたが書いてくれてしまいました。
わたしは文字を書くのが遅く、小さな文字というものが書けませんから、こうなってはもうこの紙には書けなくなってしまうのです。
けれど、あなたの断定が、わたしの安心であるようでした。




