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人生 ~たった一度を楽しもう~
自由で自然な会話は、わたしたちの間ではできません。
会話が成り立たないとかではなくて、成立しないのです。いや、あれ、一緒ですね。
しかし、わたしとあなたの苦手というものがわたしたちの間を割くのです。
たった一度を楽しもうと決め込んでしまえば、どうにかなるものでしょうか。
文字が読めなくても、楽しいことはいくらもありますものね。
それに、何もわたしは目が見えないとかでもありません。何にそれほど困るということでしょうか。
歌を楽しむこともできないあなたの隣で、わたしは何を嘆くのでしょう。
あなたの描く綺麗な線を、文字として読み取れたなら、わたしもそれに返せるのでしょうか。
わたしにも読めるように、あなたは大きな文字で、平仮名で書いてくれます。
そうじゃなくて、あなたが書き並べる漢字も読みたいものなのですがね。




