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病弱軍師 ~桜の花のように美しく散ることを彼が望まないのなら~
若くしてありながら、病によってその命を奪われた少女の話を聞きました。
本文はいろいろな文字が使われており、わたしには直接読むことができません。少しずつ読める文字が増えてきたとはいえ、です。
しかし男性の声は感情が溢れていて、きっと文字よりも伝わるものがあったのではないかと思います。
わたしが聞いたことと同じものを読んだはずのあなたの表情を見ていたら、そんなことを言えはしませんが。
わたしの病は、あなたの病は、命に関わるものではありません。
そうではあるのですが、命に関するところがないとも言い切れません。
事故の可能性がわたしの中にもあなたの中にも十分にあるものです。結局は事故で片付けられてしまうものだとしてもです。
耳が聞こえないことで、注意書きを読めないことで、いくらもありえることです。
病の少女は。
さすがに言葉にして男性は言いませんでしたけれど、わたしでも察することのできるところです。
だから、そんな質問はグッと口を閉じてやめました。




