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26~28



 不自由 ~動かなくなっていく~


 いつしか彼女は僕よりもものを考えられるようになってしまったらしい。

 素直なままで、物事を考える力も付けられてしまっては、もはや僕が偉そうに教えられるものは何もないではないか。

 文字だってすっかり読めるようだし、そうしたら僕には彼女に何を答えたらいいのだろうか。


 それとも、どちらもまた同じレベルに初心者だから、一緒に楽しめるというものだろうか。

 評価する人などいないのだから、だれにも見られていないのだからと、心のままに僕たちは彼女の手を取って、全てを月に委ねる。

 捕らわれていた僕は、勇気を出して走り出したら、思っていたよりもずっと容易に外へと出ることができた。

 安全も自由も、求めるものを僕は手に入れられた。


 彼女を支配したいとか、優位に立ちたいという気持ちはないけれど、あんまりに素直すぎるから僕は困るのだ。

「病気んなか頑張っとる人も多ぐで、確かにあたしゃあ病気なんか知んねが家族なんていながったけんど、二人ともこうして健康でいられるってんは幸せだがなぁ?」

「そのとおりですね。これほど幸せなことはありません。二人ともが健康でいられる、それでいて間違えなく今も昔も両想いでいられている、更に生活に困っているようなこともありません。正真正銘のハッピーエンドを辿ったのは、どの過程でも悲劇に導かれなかったのは、もしかしたら僕たちだけかもしれませんね」

 つい僕の微笑みには涙が滲んでしまった。



 桜 ~手の届かない花~



 大人 ~得ることで失うもの~


 知らないということの尊さに関しては、感じるところがないわけではなかったから、僕は隣の彼女を見てしまっていた。

 いろいろなことを知って、もっと知りたいと瞳を輝かせて、穢れてしまうことなく彼女はそこにいる。

 これほど綺麗に学びを得ることなどができるものなのだろうか。その最高峰を目指しているというくらいに、無邪気な彼女は眩しかった。


 我が儘な僕はとても大人とは言えないだろう。

 経験がなく偏った知識だけを抱えている僕は、とても大人だとは言えないだろう。

 それなのに僕の瞳は無垢さを持ってもいないのだ。


 彼女がどちらも持っているから、僕はどちらも持っていないのだろうか。

 経験も、純情さも。

 僕が持っているものは彼女が持っておらず、彼女が持っているものは僕が持っていない。

 だから彼女が手に入れたらば、それだけ僕は失ってしまうのだろう。

 それでも彼女に尽くす僕は、まっすぐだという見方もしてもらえるのだろうか。


 マスカレードはだれもそれを僕たちとは判断しない。

 その上でなら、素敵な例外も届けてもらえるのだろうな。



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