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矛盾 ~刹那の永遠~
私がこうして他の世界を廻っているより先に、この二人は私たちのところへ来てくれたことがあっただろう。
あのときに語ったあなたの言葉。
「平和だったからこそ、そうなってしまったとも考えられるよ。余裕があったのと、油断があったのとで、安易な人たちは騙されてしまったのだ。笑顔のままに転がされてしまっていた。平和なんてものを元より知らない方が、警戒心というものを知っているではないか」
私も聞いたことのない話だったから声が出なくなった。
そういえば、あの日々の中では私はあなたと一緒にいられた。
それならどうして今はあなたが一緒にいてくれないのだろう。
ベースが私たちにあるから私たちを優先して、ベースが向こうにあるときには私たちが二人とも登場して、私たち二人ともで会えるようにしてくれる。
そういった、交流を重視にしてくれたものなのだろう。
……あなたと一緒にいられないからと言って、こうした当たり方はいけないな。
一時的なものだって、あなたと一緒にいられる時間ができたのだ。
それならそれだけで感謝するべきことだし、喜ぶべきことである。
「それなりに私も身分が高い方なのよ。あなたがどれくらいの身分でいるのか知らないし、どういう立ち位置なのかも知らないけれど、力を持っている人の方が情報が入ってくるのは当然のこと。戦争になりかけていることを感じたら、その匂いがしたら、是非……止めようと考えてみてね。私にはできなかったこと」
男性は、私の言葉をよくよく咀嚼して、ゆっくりと話し出す。
「戦争に首を突っ込むのが嫌で、逃げてしまったのです。もう、逃げてしまっているのです。たぶん、実家に帰って家に頼み込めば何かの力はあるのだろうと思いますけれど、始まる戦争を止めるほどの力はないと思います。僕には戦う強さはなくて、耐える強さもなくて、止めるのも協力するのも辛いので、逃げてしまいました。もう、駄目なのですよ」
にこにこ、にっこりと男性は笑うしかなさそうだった。
最期 ~花の微笑み~
桜という花は、月と同じような魔力を持っている花なのだろうか。
それほど多くの人が語るのなら、私も見てみたいものだ。
「これ! 桜のお絵描きと、お写真なの!」
幼女が寄って来て、私に紙を見せてくれた。
確かに幼女が描いたらしいようなものと、まさか絵だとは思えないような、美しい花がそのまま紙面に押し出されたようなものだった。
この花が桜というものなのか。
絵でこれほど美しいのなら、実物となったら魔の力くらい感じさせてくれそうなところだ。納得である。
「桜、枝でよかったら」
美しい花の絵に見入っていると、幼女の父親らしき男性が、木の枝を差し出してくれた。
枝に三、花が咲いている。これが桜に違いなかった。
咲き誇るでもなく、たったこれだけで美しいのだから恐ろしい。
興味が持てるものであった。
特別派手さを好むでもないが、これほど地味であるのを美の対象として思えるとは。
「素敵ね。ありがとう、ありがとう」
幼女と男性と、二人に私は全力でお礼を告げた。




