20、21
後悔 ~自信がもっと付いたなら~
「もしかして、あなたが彼なの?」
三人の少女が並んで歩いていたところから、僕から見て左側にいた少女が近付いてきて、そんな不思議なことを言った。
「ごめんなさい。いや、あの、ちょっと雰囲気が似ているなって思っちゃいまして……」
クールで冷静に見える彼女だったけれど、声が消え入るようになっていくところを見ると、所謂単なる人見知りというものなのだろう。
「また会えたら、そうってことかもしれないわね。今の時点だと、どうにもあなたのことが私にはわからなすぎるもの。それじゃ、失礼したわね」
冷静な口ぶりで少女は去っていったけれど、かなり緊張しているであろうことが伝わってきた。
次に会うことができたら、きっとそれは確かにそうだ、運命といったそれだ。
信じられるかもしれない、来世という絆の繋がりだ。
言葉 ~不器用なままで~
恵まれた僕には、生まれ落ちたその瞬間から全てが備わりすぎていたのだろうね。
境遇の面では恵まれていない幼少期を過ごしたかもしれないけれど、彼女もとても強かった。正直、風邪を引いているところさえ見たことがない。
つまらない病気にも罹っているところを見ない。
食事によって腹を痛めているところさえも見たことがないのだ。
「文字っちゃ難しいことだんし、練習したかって雅っぽい話し方だなんてこりゃが限界じゃ。けんど、教えてもらったらんば、なんとなくなんにもわがらねままでねぇし、全くの頃から見りゃあそりゃ進歩だってしたに決まったる」
「あはは、それで雅な話し方のつもりなのですか。えーっと、無理をするよりも、ありのままで話しやすいように話した方が、魅力的だと思いますよ」
そう笑ってしまうけれど、彼女が信じられない速度で文字の上達を見せているのは確かであるし、それを僕は最も近くで見ていた。
頭の悪い方ではなかったのだろう。
幼子さながらの記憶力で、年齢はそう変わらないだろう僕が、今から知らない言語を覚えようとしたって、ああ上手くは書けないだろう。
だれだって苦しんで、悩んでいるのだろう。
僕がそうだと主張する小さく甘いことではなくて、辛さを天秤で測ることはできないものだけれど、それでも間違えないと言えるくらい僕は弱いのだ。
そして僕は幸せなのだろう。




