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守護 ~いつでもあなたの傍で~
「愛する人のためには、なんでもするのが正しいことよね。愛する人を穢す猛毒は消毒して、抹消して、いつでも彼を見守っている私こそ、素晴らしく神に愛されるべき存在よね!」
まだ返事をできないでいるというのに、続けられた。
「レンズ越しにいつだって彼は私に笑顔を向けてくれる、私にだけ特別な笑顔を、これが証拠ってわけよね」
更に続けられそうになってしまい、結局僕は何も言えない。
「客観的に自分の行動を見てみたら、僕に同意を求めるよりも正しい回答が得られるのではありませんか」
これだけが限界だ。
けれどこれだけ言えただけでも、僕は彼女に倣って強くなれていると思う。
僕が話して彼女が黙っている。
いつの間にか、僕たちは近付いている。それが嬉しい。
永久不滅 ~僕たち二人の愛は止まることを知らない~
小説家というのはつまり、小説を書く人ということだろう?
つまりは本の原型を作ってくれる人というわけで、つまりはつまりは、僕というものを創ってくれた人というわけでもあるのだ。
本というのは僕の世界そのものだったのだから、憧れや感動は大きくあった。
僕が実際に彼の創り出した世界を見たわけではなくても、その能力を持っているというだけで、僕には魅力的に思えた。
夢を持っている、止まることを知らない愛を注いでくれている人がいる、そして何より幸せで、不安で不安で堪らない。
本の世界の住人に、僕は憧れすぎてしまっていたのだろうか。
変化 ~種はいつの間にか植えてあった~
歴史として僕も戦争を学んできたけれど、それが経験になることがあるかもしれないのだろうか。
既に傾いていた国政は、簡単に崩れてしまうものなのだろうか。
「曇りのない平和でさえ、関係者にわずかな兆候を見せるのみで、戦争の起こりにまで発展してしまったのですよね?」
警備を雇っていたので、僕の身が危険に晒されるようなことはないけれど、力がない人たちが虐げられていることは知っている。
貧困層は犯罪に手を染めた。
富裕層は軍事力を抱えた。
必要とあれるだけの魅力があれば、富裕層に取り込まれ、奴隷の扱いでも生きていくことはできる。
そうならなかった人たちは、没落していった。
自ら軍事力を持っていないでは、力によって奪われてしまうばかりだから、結局は没落した。
革命運動でも広がれば、それを鎮めようとするに決まっている。
言葉での訴えが行われて、話し合いで解決へと導かれていくようなことはない。力による訴えを、力によって制するのだ。
そうした紛争が拡大していくのは、時間の問題なのではないだろうか。
革命が起こるか、本格的な内乱となるか。
そのとき、僕が前線に立つことはないけれど、巻き込まれないことはありえない。
それこそ僕は責任者ともなりうるのだ。勝っても、負けてもだ。
「平和だったからこそ、そうなってしまったとも考えられるよ。余裕があったのと、油断があったのとで、安易な人たちは騙されてしまったのだ。笑顔のままに転がされてしまっていた。平和なんてものを元より知らない方が、警戒心というものを知っているではないか」
科学者の彼は、当事者とは思えないほどに、やけに達観的だった。




