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守護 ~いつでもあなたの傍で~
いつだって僕の言葉は僕にも返って来るものとして、自分への問いも込めてゆっくりと、覚悟を決めて僕は尋ねた。
「相手のご気持ちは、確かめられたのですか?」
予想外なほどに彼女は感情的に答えた。
「私の愛が間違っているとでも言うのっ!」
そうは言っていないのだけれど、すぐさまそう思うということは、本人がそう考えているところがどうにか否定していながらもあるということなのではないかと思った。
実際、僕は確かめたのか質問しただけだ。
もし間違えなく愛し合っているのだと知っていたら、自信を持っていたらもう少し余裕があってもいいのではないかと思う。
それこそ、わざわざ確かめてなどいないとしてもだ。
僕と君とで過ごした時間は短かった。
でも僕は君が僕を愛してくれていたことも、僕が君を愛していたことも疑うことはない。
君の香りを待っているのだと、この言葉は、僕の心を騙そうとする必死の嘘だ。
それだって愛していたことまでは疑う心を持っていない。
黙って彼女の次の言葉を待っていれば、突然、僕の前で彼女は泣き出してしまった。
女性を泣かせてしまった罪悪感に僕は動揺しかできない。
泣かせるようなつもりはなかったのだが、そうなってしまったからには、何か慰めの言葉でも掛けるべきなのだろうか。
そんな言葉、僕は持っていない……。
「私は、私は愛していたから、守ろうと思って、それで、それでっ、それで必死だったの! なのにどうしていつも私が悪者なの……? 本当に悪いのはあの女なのに。みんな、あの女に騙されているだけなのにぃ」
彼女が話している相手のことを僕は知らない。
彼女が置かれた状況も詳しくは僕は知らない。
そんな僕が彼女に掛けてあげられる言葉なんてないのかもしれない。
ただでさえ女心というのには疎い僕だ。
僕が唯一愛した君は、あまりにも強い人であったから、気遣いのできない僕のことを受け入れてくれていた。
だれよりも君は強い人だった。
「相手の気持ちをお考えになられましたか? 頼まれていないのに、親切心を押し付けられて、それで本当に喜ばれると思っているのですか? 押し売りで感謝されると? それに、感謝されるためにやっていることなら、それは相手のためではない。好かれるためにやっているのなら、自分のための行動ではありませんか。間違っているとはいいませんけれど」
「もう止めてっ!」
「止めたら僕以外にだれか言ってくれる人がいるのですか!」
お節介は理解していたが、今だけは自分が持っていない自分を演じていられると思って、これもまた自分のための自己満足として声を出していた。




