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9~11



 死後 ~受け継いできた古墳~


 死ぬことが怖いのは、僕じゃなくても同じだったのだ。

「……墓を作るのは、死を意識せざるを得ませんから、恐ろしいではありませんか」

「遥か昔から大きな大きな墓を作ることで、ほら、墓は死後も残るでしょう? だから、そうしたら、死んでしまったずっと後も僕のすごさがわかってもらえるし、注目してもらえる。命よりもずっと長く、僕を残せるじゃないか」

 死んでしまった後に目立てて何が嬉しいのだろうか。

 恐怖は同じだったのだけれど、目的は僕に共感できるものではなかった。


 しかし彼女はその恐怖さえ共感できるものではなかったらしい。

 素敵な彼女と同じ願いを抱えていれば、来世も会えると僕も思えているから、前ほど恐ろしいものではなくなった。

 少なくとも、僕たちがいなくなってからの僕たちの評価を気にするくらいなら、来世での僕たちのために動きたい。

 体は僕たちじゃなくても、魂は僕たちには違いないのだからね。


 魂が僕たちならば、来世でそこにいる僕たちは、僕たちだ。

 もしかしたら今の僕たちも、前世で契りを交わした二人が、願いを叶えて巡り会った場所の二人かもしれない。

 目立った証は残されていないけれど、前世の僕たちと今の僕たちは重なっているはずだ。



 夢 ~遥か遠く飛鳥~


「んだがよ、あたしらとおんなじゃな」

 何が同じなのだかわからなかった。

「ほんどはよ、賊やっとる下賤なあたしゃと、とんでもねぇ坊ちゃんなあんだじゃあ、住む世界そのもんが違ぇでねぇが。だがら、あんだが迎えに来てくんなかったらば、こうなってたってことだっぺや」

 進んで彼女が話してくれることは少ないから、どうしたのかと思ったのだけれど、まさかこんなことを考えているとは思ってもいなかった。


 彼女の言葉を聞いて、青年は輝く瞳を向けてくれた。

「品があっから、都人ってことか?」

「都、ですか。そんなようなものだとは思います」

 僕たちと境遇が似ていると思ったのは、彼女だけではないらしい。

 幸せな関係が、希望になれたようだ。

 だれかの希望になれていることが僕は嬉しくてならなかった。



 忠犬 ~奈良の主はだぁれ?~


 思わず僕は拍手してしまっていた。

「素晴らしいですね。平等とは、夢があることです」

 どれほど人々が平等を望んだところで、簡単に完成されるものではない。

 だから絶対的な力がある人がいなければ作り上がるものではないのだ。


 僕には残念ながらそこまでの力はない。

 そして平等を望むのは僕のような立場の人がすることではなく、それこそ他に道をなくした人が、最後の手段として行う革命でなされることなのだ。

 そのときに犠牲になることこそ僕の役割だ。

「わかりますかしら。独裁の素晴らしさ、その平等さ、ありますよね」

 革命が起こるまでの命に賛成はできなかったが、素敵なことだとは思えた。



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