25、26
汗 ~努力は影でするものです~
とんだかっこつけでしかないような気もするけれど、僕はそんなかっこつけがかっこいいと思う。
「あなた、私のことを相当調べたそうですね。その下調べがいかほどのもので、どういったもののことを言っているのか私には想像もできませんが、その努力が実った結果が今とも言えるのではありませんか?」
上から目線な僕の言葉をあなたは笑った。
「気持ち悪いと思われたらすみません。一日中垣間見をして、夜になって歌をお届けして、やはり何も返してはいただけず、歌が届いたのかもわからないまま使用人の方に追い返される。そんな日も少なくはなかったものです」
「それは、……不安だったことでしょうね」
「いいえ」
即答で否定をされて、僕は目を見開いてあなたを見ることしかできなかった。
無言であなたが僕を抱き締めようとするから、咄嗟にあなたを突き飛ばす。
今の僕が求めているのは、そんな優しさではなかった。
「いつか触れられる日が来ると、知っていましたから」
にこっと爽やかに笑うのだから、なんと憎いことか。
「……卑怯です」
「どちらがですか」
僕の呟きに、囁き返された。
不自由 ~動かなくなっていく~
死。意識しないではいられなかった。
革命は全てを壊した。革命は、惨く進められていき、多くの人を巻き込んでただただ広がっていった。そうして、全てを壊してしまったのだ。
だから僕も自分が破壊されてしまう日を、本当にこの革命の中に落とさないでいられるかというのは、不安な点であったに決まっている。
それだから、だから……僕にはその虚しさがわかる気がした。その開き直った幸せの場所も、僕は知っているような気がした。
だれもが夢見た平和の世界で、大切な人だけが変わらない病という闇に呑み込まれなければいけないだなんて、慣れた幸せから突き落とされるだなんて。
それまでが恵まれていた。それが当たり前の世界もある。
わかっている。わかっていなかったけれど、もうわかっている。
それでも自分が不幸な気がしてしまうものなのだ。
悲劇の主人公を気取ってしまいたくなるのだ。
生まれ持っていた僕の身分というものも、本当は恵まれたものである証拠であって、決して当然ではなかったのだということも知っている。
無情にも、簡単に殺されていく平民を、僕は知らなかった。
それでも今は知っている。
そんな今でさえ、自分だけが苦しんでいるような気がしてしまうのだ。自分だけが不幸だって、どうしたって思ってしまうのだ。
嫌味のようなものでもあろうが、僕には共感できるところがあった。




