彼はカボチャの王様
助けてくたさい、と小さな声が足元から聞こえた。
視線をやると小さなカボチャが転がっているだけだった。
空耳か、と視線を戻して歩こうとした。
助けてください、とまた小さな声が足元から聞こえた。
これはもう空耳じゃない。
私はしゃがみ込み、声の主を探した。
とりあえず、カボチャに触れてみる。
何の変哲も無い小さなカボチャ。
だが、そのカボチャには目と口があった。
「良かった。気づいてくれたのですね」
カボチャから歓喜の声がする。
私は驚いてカボチャを落としそうになった。
どこの世界にしゃべるカボチャがあるのだろうか?
私は夢を見ているのか?
この昼日中に?
この現実を無視してカボチャを捨ててしまおうかと思った。
「ああ、どうか捨てないでください。話を聞いてください」
カボチャに必死に懇願されて私は話を聞くことにした。
カボチャの話によると悪い魔法使いに
魔法をかけられてカボチャになってしまったという。
ふぁんたじー。
この世界に魔法使いがいるなんて!!
信じられないがここにしゃべるカボチャがいることも現実。
私は信じるしかないと腹をくくった。
「それで?魔法を解くにはどうしたらいいの?」
「協力してくれるのですか?なんて心優しい人なのでしょう!!」
感激するカボチャを片手に私は不思議な世界へと足を踏み入れた。
無事魔法が解けて、彼が実は王様だと知って驚愕するのはまた別の話。