16.伏線の種類③ 謎すぎてワケわかんない伏線etc
3.謎すぎて訳わかんない伏線
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これ行きます。
伏線が【これしかない】と思ってる人、多いと思います。特に、前の話の2と今回の3だけだと思ってる人。
この3の伏線は、かなり難しいです。下手すると【分かりにくい小説】になって、読者が減ります。
拒食症の話で例文を書くと、こうなります。例のファミレスのシーンとは、全く別のシーンです。
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例文1
優斗は真美の肩をとんとんと叩いた。真美が振り返る。
「おい、ちゃんと……飲んでる? 大丈夫か?」
「大丈夫よ。気にしないで」
「あの人はなんて?」
「やっぱり時間はかかるって……。それにほら、わたしあの場所嫌いだから……」
「そうも言ってられねえだろ。ちゃんと行かなきゃ。それにほら。なんつうか、選択すればまだ──」
「選択? ああ、そういうことね……」
「おう……」
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何が起こってるか分かりました?笑笑笑笑
謎すぎてワケわかんないですよね?笑笑笑笑
こういう伏線、多いと思います。現代ものとかじゃそこまで見ないけど、例えば【悪の裏組織】とか【裏組織のやり取り】とかで書いてる人いませんか?
群像劇とかやってる人で、主人公とかと全く関係ないキャラたちが会話してるシーン、入れたりしてませんか?
今回のこの例文解説すると、
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例文解説
「おい、ちゃんと……《薬》飲んでる? 大丈夫か?」
「大丈夫よ。気にしないで」
「あの人《=医者》はなんて?」
「やっぱり《治るのに》時間はかかるって……。それにほら、わたしあの場所《=病院》嫌いだから……」
「そうも言ってられねえだろ。ちゃんと行かなきゃ。それにほら。なんつうか、選択《=好きな物だけ食べる》すればまだ──」
「選択? ああ、そういうことね……」
「おう……」
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《》で補足説明してみました。
これで分かりやすくなりましたね。
こういうことしてる人多いと思うし、ダメとは言わないです。私もやります。
でもこれは、【多すぎると嫌われます】。
だって、何やってるかわかんないから。
もしかしたら例文1の方でなんとなく意味が分かった人はいるかもしれませんね。
だって【真美が拒食症って知ってる】から。
ネタを知っていれば、楽しめるんですよ。主人公のいないところで、真美と優斗が怪しい会話してる……フフフ。みたいな感じでね。
でも、【真美が拒食症】って知らない人は、【なんにも分からない】んです。
読者はこのシーンをみても、
【何も分かりません】
▲置いてけぼりになります▲
ここが問題なんです。【置いてけぼり】になること。
読みやすい小説を書くなら、特に例の[ライトユーザー]を意識するなら、この訳分からない伏線は減らした方がいいです。
もちろん、こういう謎の会話が多い物語が好きな人もいると思います。あえて多くするのは構いません。それがこだわりならば全く問題ないです。
でも、[ライトユーザー]が離れることを、覚えておいてください。
怪しいシーン、全部なくせとは言いません。
・シーンを減らす
・1ページまるまる使わない
この辺を意識するだけで大丈夫です。
そして、【読者がこの伏線の意味が分かる体】で物語を進めないように気をつけてくださいね。【のちのち分かる】とも思わないでください。
つまり、【真美が拒食症】だと知っている上でこの文章を読めばわかりますが、
この文章を読んだあとに【真美が拒食症だった】と知っても、【優斗と真美の会話は覚えてません】。
例えば【真美には拒食症のための医者がいるんだよ】っていう体で書かないでください。拒食症だと分かったところで、「読み返してさっきの謎のシーン意味わかった!」なんて読者は絶対にいないからです。
それと、伏線とはちょっと違いますが、過去編を書く人。気をつけてください。私も書きますが笑。
過去編ってぶっちゃけ【つまんない】と思われることが多いです。なんでかって?
【今まで追ってきたキャラクターがほとんどいないから】
【まるで新しい小説を読んでいるかのように錯覚するから】
です。
だから、かなり慎重に入れてください。マンガですら、飽きられることが多いと、私は思っています。
例えば過去編を入れるにしても、3~5話連続で過去編にしないとか、過去編に【みんなが知ってるすごい人気なキャラクター】を【たくさん】入れるとか。そういう工夫をしてください。
過去編が必要な理由は分かるんですよ。分かるんです。私も書きます。でも、【飽きられることが多い】っていうのはよくよく分かっておいてください。
それが分かって書くのと分からないので書くのでは大違いです。
過去編にはかなり気を使ってください。みんなが【読みたいと思う過去編】の作り方を意識してください。
A.全体に関わる(クライマックスなど)伏線
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まぁ書いてある通りです。一番重要な【隠していること】のための伏線ですね。
B.ほとんどすぐに回収される伏線
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3~5話分くらいで回収される話です。
ちょっとした謎を出して、そのあとすぐに回収してって感じです。
私の小説で言うと、
(ここから『愛した人を殺しますか?――はい/いいえ』のネタバレになります。第18話まで読んでない人はネタバレです。でも大した話でもないので、あんまり気にしなくてOKです。無人島の話のネタバレです)
【人が消える無人島】の話が出てきます。
第12話
謎の無人島に到着。
第13話
一人、人間が消える
第14話
人間が消えたのはニンフという種族のせいだと発覚。
二人目が消える
第15話
ラムズ(超重要なキャラ)死ぬ
第16話
やっぱりラムズ生きてた。
超強そうな怪物を見つけた。襲われた。
第17話
怪物と戦う。
怪物の名前を主人公が思い出す。そして無人島の正体に気付く
(まだここでは読者には明かさない。半分くらい明かす)
第18話
無人島でなんで人が消えるようになったのか、
怪物の正体はなんなのか、
無人島で見つけた謎の言葉とは?
っていう流れになってます。
ネタバレをします。
この無人島は、【人が消える無人島】です。
伏線を並べていきます。
伏線① メアリという主人公は、とある事情で海にある島は全部分かっています。見たことがない島なんてないんです。なのに今回は島の正体が分からなかった! なんで?
これは、aの伏線の貼り方です。
[2.あからさまな伏線]のうち、
[a.一人称の文章で、主人公(喋ってる人)に疑問に思わせる]伏線です。
引用
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第12話
島は小さそうだ。目を凝らせば島の端も見える。木々が生い茂っていて、全く未開拓地なよう。全然人が住んでいる雰囲気はないから、たぶん無人島。恐らく魔物はいるわね。
それにしても、全く見たことがない島だ。わたしが知らない島なんてないはずなのに。
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あーけど、わりと、分かりにくくしてましたね。とりあえずaのやり方であることは確かです。
伏線② 島で何回か骨みたいなものを見つける
これは、
・[1.気付かれなくてもいい伏線]
・[1.気付かれなくてもいい伏線]
だが[a.一人称の文章で、主人公(喋ってる人)に疑問に思わせる]伏線
・[パターン1]だったかの、【真美が何回もトイレに行くシーンを書く】的な伏線
これらを複合して使っています。
引用
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第14話 (冒頭)
森の中が暗いせいで、時間すらも分からなくなってきた。けっこう歩いてたし、たぶんお昼は回ったはず。日が沈むまでには帰るってことだったわよね……。
石に座って、足をブラブラとさせる。眼前に落ちていた、何かの角みたいなものを蹴った。どっかの魔物の角かな。
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第15話 (会話の途中)
「一人で生きていく、って……。分からないけど、今この森に取り残されたら死ぬわね」
わたしは怪しい雰囲気の森をもう一度眺めた。足元で魔木の根っこが少し動いて、わたしは慌てて脇に避ける。魔木は襲って来なかった。でも急に動いたせいで、何かにつまづいて転びそうになる。ジウはわたしの様子を見て、ケラケラと笑った。
でもなんだろう、これ。なんだか白い骨みたいに見える。そういう魔植(※魔物の植物版)なのかな。
ジウは話を続ける。
「たぶん人間は誰かがいないと生きていけないんだ。それは物理的に生きられないとかじゃなくて、精神的にも。誰かに認められないんじゃないかな。だから彼は正義を求めたんだよ。誰かに『ありがと』って言われたかったんじゃない?」
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第16話
わたしたちはあれからずっと洞窟の通路を歩き続けていた。たまに道が狭いところや、普通より暗いところもある。魔物は相変わらず少なかったけど、代わりに床にいくつもの骨が落ちていた。人間やエルフの骨とはちがう気がする。魔物の骨って訳でもない。
それに、魔物が頻繁に襲ってくるわけじゃないのに、どうしてこんなに骨があるんだろう。後ろにいる人間だけは骨に怯えていたみたいだけど、わたしも含めて、他の五人は気にしていなかった。
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分かりますかね?
段々怪しくなってるんですよ。
第14話の時点では、メアリ(主人公)が【角を蹴ったけどすぐに自己解決してる】ので、大半の読者はそれで満足します。
そもそも、地の文にちょっと入ってるだけだから見逃します。
第15話の時点では、「白い骨」っていう単語が出てきます。骨ってちょっと怖いですよね? しかも「何か」と、ルビを振っています。
第16話の時点では、かなりメアリが疑問を持っています。人間の骨でも、エルフの骨でもない。魔物の骨でもない。
──じゃあ誰の骨?
そう思わせるために書いたんです。
でもこの辺一帯、おそらく見逃してる人がいます。
だからこれは基本は[1.気付かれなくてもいい伏線]です。
ただ、読み返した時に【ああああ!】ってなります。あと、勘が鋭い人。
じゃあこれのネタバレはなんなのか。
この骨の正体は【パーン】という種族の骨です。
パーンというのは、羊と人間が合体したような見た目の種族だと思ってください。
ニンフは、森の精霊みたいなイメージでOKです。
さらに、襲ってきた怪物の名前は、《スキュラ》と言います。また、この島は《ニンフによって人間が連れ去られます》。
この無人島はですね、昔、このパーンが大量にニンフから殺されたことによって出来た島なんです。
そもそも、なんでパーンがニンフによって殺されたのか。
ここから、神話風にネタバレをしていきます。
①あるスキュラという名前のニンフがおりました。ニンフという種族は、みんな純潔を貫いています。一方、パーンという種族は、好色です。純潔とは正反対の種族でした。
②あるパーンの男が、スキュラちゃんのことを好きになり、めちゃくちゃアピールしました。そしてなんと、スキュラちゃんはパーンの男を好きになってしまいました!
③でも、そもそもニンフは純潔で、パーンは好色なんです。ニンフを作った神様が怒りました。
「好色なパーンに恋をするなんて、ニンフの風上にも置けない!」
④ニンフのスキュラちゃんは、神様に怒られ、姿を変えられてしまいました。怪物になってしまいました。どんな怪物かというと、狼が6頭下半身についた怪物です。上半身は人間の女の子みたいな怪物です。
(スキュラでネット検索)
⑤ニンフのみんなは、スキュラちゃんが怪物になったことに悲しみ、怖がりました。そしてパーンを皆殺しにすることを決めました。そうすれば、パーンに絆されて恋をすることはなくなるからです。つまり、もう怪物になるニンフはいなくなるからです。
⑥パーンたちはニンフによって絶滅させられました。そうすると、パーンを作った神様の方が、今度は怒りました。
⑦パーンを作った神様は、ニンフたちに罰を与えます。ニンフとパーンが住んでいたこの島を、【神出鬼没の島】にしてしまったのです。
つまり、いつどこで、どんな姿で現れるか分からない、伝説の島のような形にしてしまったのです。
⑧ニンフは人間が好きです。島にやってきた人間とお喋りするのが好きなのです。でも、神出鬼没の島になったせいで、島に来る人間が減ってしまいました。
ニンフは悲しみました。
⑨ニンフはそれからというもの、たまたまこの島に上陸した人間がいたら【必ず連れ去る】ことにしました。また、怪物になったスキュラちゃんは、いつまでも洞窟の中で訪れる人を襲い続けています。
長い……。
読んでくれてありがとう……。
とりあえずこういう、神話チックな流れになってます。もう分かりましたよね?
・なんで謎の骨──パーンの骨があったのか
・なんでニンフは人間を連れ去るのか
・なんでどんな島でも知ってるはずのメアリが、この島ばかりは見たことがなかったのか
・なんでスキュラが存在しているのか
ただこの話、12話~18話で終わっちゃうんですよ。つまりこれが、【B.ほとんどすぐに回収される伏線】です。
物語の全体をなしている訳ではない。でも、小説の中のあるストーリーの中で提示され、そしてすぐに回収されていく伏線になります。
ただ!!
じゃあこの無人島の話っていらないんでしょうか? 小説の中で、なくてもいい話なんでしょうか?
いやいや、そんな事はないんです。これらは、【A.物語全体に関わる伏線】が入ってるんです。そもそも、これらがないと物語が進まないんです。
伏線①この島では、スキュラのいた泉のそばに【謎の石版】があった。その石版の文字は、以下の通り。
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滴り落ちた雫の輪
肆龍 壱精 弍極 壱中
薄板の畳船
零使
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伏線②主人公が『海にある島は全部知っている』という発言。なんで全部知っているのか?
伏線③さらにこの、スキュラの怪物化に関する話について、引用。
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メアリはこの話を、よく他の仲間から聞いていた。彼女らの呪いと似通うところがあったのだ。そして話の最後には、いつもこう付け足された。
『わたしたちも人間に恋なんてしちゃいけないのよ』
と。
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このような描写がある。
伏線①→物語のクライマックスに関わる伏線
伏線②→主人公の正体(種族)に関する伏線
(私の主人公メアリは人間ではありません。見た目は人間です)
伏線③→主人公にかかっている呪いの正体に関する伏線
以上、この3点は、【A.物語の全体に関わる伏線】です。
つまりですね。物語というのは、AとBの連続なんですよ。【Bすぐに回収される伏線】がたくさん出てきて、そのうち、Aに関わる伏線も少しだけある。
Aに関するちょっとした謎を残しつつ、次に進む。
おそらく伏線は、こんな感じで出来ています。
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伏線というのは、物語を繋げるものです。
全て最後まで結末がわかってるからこそ、書けるものなんです。結末がわかってるから、後ろから計算して入れていくんです。
プロットが嫌いな人っていると思うんですけど、書き出さなくてもいいから、せめて【決めては】いてください。
結末を決めてない人に伏線は貼れません。
私のように、伏線を貼りまくってる小説は、二回読むと分かるようになります。
ああ、あとは、伏線を回収するときは、【全部の伏線を読者が気づいている】という体では書かないでください。
つまり、それなりに【解説しろ】ってことです。
例えばさっきの無人島の話ですが、読者で骨のところ気付いた人、たぶんあんまりいないと思います。スキュラとか、人間が消えるとかは普通に分かるんですけどね。
なので、こう語ってます。
『愛した人を殺しますか?――はい/いいえ』引用
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「怪物になったスキュラを見て、他のニンフは驚き、悲しんだの。そしてまた自分たちが同じ目に合わないように、パーンを皆殺しにした……」
だから、あの島にはたくさんのパーンの骨があったんだわ。森の中にも、あの洞窟の中にも。洞窟の方が多かったのは、パーンがあそこを住処としていたからかしら。
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こんな感じで、骨についてちゃんと【あとから触れる】んです。気付いてない人もたぶんいるから。
こういう感じで、伏線についてはちゃんと【解説】していきましょう。これをしないと、【読者が置いてけぼり】になります……。
よし。長かったなぁ。疲れた……。
もう、このエッセイは次のページで終わりにするつもりです。他に聞きたいことがあったとしても、たぶん書かないかなぁ……。でも、感想欄に書いておいてくれれば、いつか完結させたあとにまた付け足すかもしれません。