12.情景・人物描写を読む選択は、読者に委ねる
前回の話とかなり似てるかもです。
※これも前回と同じく、【地の文が私くらい多い人】向けです。少ない人は真似できないと思います!
情景描写や人物描写は、読みたい人だけが読めばいいです。【物語】だけが好きな読者[ライトユーザー]は、飛ばしたいのです。
だから、「読むか読まないかの選択」を読者に委ねると、文章としては分かりやすくなるんじゃないかな、と思います。
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人物描写や情景描写が始まる!って合図を付けられるといいね。人物描写や情景描写オンリーの段落を作ろう
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人物描写や情景描写が始まるよってことを、明確にした方がいいと、私は思っています。
クッソ長いんですけど、『愛した人を殺しますか?――はい/いいえ』引用します。これは読んでくれると助かります。
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① 俺はぎょっとして身体を起こした。そしてもう一度、彼女をまじまじと見た。
② ミティリイルは、身長はおそらく160くらい。シルクハットみたいな薄紫色の帽子を被っている。そこに大きなピンク色のリボンがついていて、その上もレースやら何やらで装飾がついている。まるで不思議の国のアリスとかに出てきそうな感じ。
③ 服は少しゴスロリっぽい雰囲気もあるけど、「ゴス」ってより「不思議系ロリ」? 胸の真ん中に、これまた薄緑色のリボンがあって、そこからぱっくりと割れたようなデザインのワンピースを着ている。
④ そして驚いたことに、彼女はお尻から白い猫みたいな尻尾が生えていて、耳にも大きな白い猫耳が付いている。
⑤ ──つまり何が言いたいかというと、彼女は絶対ヴァンピールじゃない。ヴァンピールがこんな眠そうなはずがない。もっとセクシーなお姉さんじゃねえの?!
「その……嘘か?」
「嘘? 本当だヨ~。信じてくれないノ? じゃあお腹空いているし、またいただこうかなァ」
⑥ ミティリイルはそう言うと、俺の寝ているベッドに足をかけた。そして俺をぽんと押してまた寝かせる。ニコリと笑う。といっても眠そうな顔でできる精一杯の笑み。
⑦ 彼女はゆっくりと口を開ける。真っ赤な口の中で、ギラリと牙が光った。
「それジャア、いただきマース」
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まず、私的には、①の段落
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① 俺はぎょっとして身体を起こした。そしてもう一度、彼女をまじまじと見た。
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で、
【これから人物描写始まるよー】
っていう合図をしています。
そして、②~③まで、人物描写のオンパレードです。本来こんなに長く人物描写を書く必要はないんですけどね。
じゃあなんで書いたか?
この女の子ミティリイルは、「俺」こと「レオン」という主人公の男の子を襲ったんですよ。
女の子に襲われるシチュエーションって、やっぱり男の子的には萌えませんか?
知りませんけど!!!
少なくとも私なら、見知らぬイケメンに唐突に押し倒されたとしたら、そのイケメンの見た目、気になります笑。
どんな見た目なのか、私のタイプなのかそうじゃないのか、めっちゃ気になります。
そんな感じで、同じ人がいると思ったのです。
特に[しっかりユーザー]なら絶対読みますしね。[ライトユーザー]でも、吸血鬼の女の子が好きな人なら、容姿も気になるんじゃないでしょうか?
私と同じ価値観の人がいると思ったから
「レオンを襲ったのはこんな女の子だよ! どう?! 好き?!」
みたいな感じで、人物描写をたくさんしておいたのです。
そして、この②~③の段落
▲読まなくていいんです▲
興味がある人だけが読めばいいんです。
「女キャラって基本私嫌いなのよね~」なんて人は、流し読みすればいいんです。そのために、わざわざ「これから人物描写始まるよ~」って合図をしたのです。
そして、わかりやすいように段落を設けたわけですね。
【全部を読まなくていい】からこそ、分かりやすいように段落を分けるのです。
読みたい人が読みやすくするために、段落を分けるのです。
③と④のあいだが一行あいてるんですけど、④はできれば読んで欲しかったから空けたんですよね。
結局この、①~④で言いたいことって、
ミティリイルは全くヴァンピール(吸血鬼)に見えないよ!?
ってことだけなんですよ。
だから、③の所から読んでねっていう意味で、改行をしたのです。
あんまり上手い説明ができないんですけど、とりあえずは、【人物描写】や【情景描写】は、この段落がそれなんだって分かるように書きましょう。(私の書き方を真似する場合のみ)
同じ段落の中に、違う要素を入れるのは基本やめましょう。(私の書き方を真似ry)
まぁ、そもそも五行程度の段落にするって決めてたら、違う要素がそんなに入ることはないと思うんですけどね……。
他の例文を出します。
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わたしは目をこすって、もう一度部屋の中を見た。間違いない。間違い、ない。これは夢じゃない。
※ ──部屋には、宝石しか、なかった。
① わたしは意を決して、部屋の中へ踏み込んだ。
② ダイヤモンド、オパール、サファイア、エメラルド、ルビー、トパーズ、ガーネット────。数え上げたら切りがない。見たことのない宝石もある。
③ 部屋には小さな窓があるだけで、太陽の光がさんさんと降り注いでいるって感じはない。むしろ薄暗いくらいだ。
④ でも、変に明るい。宝石が自分の持つ煌きらめきを最大限に放っているのだ。キラキラするー、なんてもんじゃない。宝石が互いに反射し合っていて、なんだか光に攻撃されている気がする。
⑤ 目が痛くはならないの!?
⑥ ……ラムズは既に、愛おしそうに自分の宝石を眺めていた。
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ここで大切なのは、※の段落です。
「部屋の中には宝石しかなかった!」
この文章で、たった一文で、簡潔に、分かりやすく「どんな情景だったの?!」ってのを書いたんです。
そして、②~④で、ダラダラ「宝石しかない部屋の様子」を書いたわけです。
※の文章があることで、読者は【身構える】ことができるんですよ。
「これから部屋の描写するのか! なるほど!」
みたいな感じでね。
※の段落は、後ろに書く段落(②~④)の、要約みたいなものです。だって言いたいことは、「部屋の中には宝石しかなかった」ってことだけだから……。
こういう感じで、※のような段落(一文)を一つ、ババーーン!とのせたあとに、
細々段落で説明するというやり方はすごくいいと思っています。
ちなみにこの「ババーーン!」とのせる一文は、前と後ろに一行ずつ改行した方がいいです。えっと……意味わかります?
「──部屋には、宝石しか、なかった」
の文章に注目してください。
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《例》
わたしは目をこすって、もう一度部屋の中を見た。間違いない。間違い、ない。これは夢じゃない。
──部屋には、宝石しか、なかった。
わたしは意を決して、部屋の中へ踏み込んだ。
ダイヤモンド、オパール、サファイア、エメラルド、ルビー、トパーズ、ガーネット────。数え上げたら切りがない。見たことのない宝石もある。
↓
《私の書き方》
わたしは目をこすって、もう一度部屋の中を見た。間違いない。間違い、ない。これは夢じゃない。
──部屋には、宝石しか、なかった。
わたしは意を決して、部屋の中へ踏み込んだ。
ダイヤモンド、オパール、サファイア、エメラルド、ルビー、トパーズ、ガーネット────。数え上げたら切りがない。見たことのない宝石もある。
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こういう感じですね。
上下に空行があると、大切な文章だけすごく目立ちますから。
とにかく、こうやって※の段落や②~④のような情景描写オンリーの段落を明確にすることで、
読者は【読む段落と読まない段落】を決めることができるのです。
そりゃ全部読んでくれれば、一番いいですよ。でも、飛ばし読みをする読者がいるのはたしかです。それこそ[ライトユーザー]ですね。
だから、【そういう読者のために】、分かりやすく書くのです。
飛ばし読みをしない読者[しっかりユーザー]も、「この段落で何が伝えたいのか」ということが分かれば、読みやすいと感じるんじゃないでしょうか?