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僕と彼女のカルデシズモ-輪-  作者: ロマンス加藤
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第2話「the past」

幼い頃から何度も同じ夢を見ている。

心地がいいとは言えないレム睡眠の中で

今日も【ソレ】なんだろうとか思っている。

………

……


正直'アイツ'は好きではない。

十数年の付き合いらしいが

説教臭く、皮肉めいた発言が鼻にかかる。


僕の目の前には'光'がある。

暖かいまるで、太陽のような光だ。

眩しくて目を反らしたいが抗いきれない。


その光は何かを言う。

だがそれはブツブツと、電波の悪いラジオのように

途切れ途切れの言葉となり耳に入る。

「輪廻の輪から外れたー…」

ブツブツーー…

「ようやく巡り合えるー…」

ブツブツー…

ーーー…

ーー…

ー…


「んっー」

ゆっくりと瞼を開き伸びをする。

ふー、と息を吐くと息が白い。

日本列島を襲った寒気は、未だその猛威を振るっている。

僕は身を起こし、布団を畳む。

まだ頭がすっきりしない、でもそれはいつもの事。

そう、'いつも'なんだろ?

そんな事を考えながら、充電器に挿しているケータイ電話を手に取る。

画面には1997年3月3日7時15分と、デジタルが表示されている。

アラームより先に目が覚めたようだ。


忠弘「おっ(^ω^)!」

下半身を見る。


忠弘「拙者の息子がビックバンッ!www」

皆さま、これが宇宙誕生の瞬間である。

はっはっはっと高笑いをする。

カラ元気で冗談めかした。

例えば今日が'その日'だとしても…


覚悟は出来ている。

いや、思えば随分と昔から出来ていたのだろうか。

それは僕の体に残る、いくつもの痕跡からでも分る。

他人から見れば異常な感情かもしれない。

でもこればっかりは、当の本人でしか分らない苦しみなのだ。


放課後の屋上。

まだ日が落ちていない、学校のグラウンドでは

日々の鍛錬に励む部活動の生徒たち。

いつもと変わらない日常。

変わらないからこそ日常なんだろうか?


忠弘「さぁてサクッと逝きますか」

作り笑いをし、卑下するかのように

自分に語り掛ける。

遺書など残してはいない。

自分が存在した事すら残したくはない。

人生なんて辛く悲しいものなんだ。

まるで何かを悟ったかのように僕は想う。


この高校のいいところは?と

尋ねられたら僕はこう答えるであろう。

現代においては、ある意味で開放的な学校である事。

事実こうして屋上にフェンスなんてものはなく

容易に飛び降りることがー…


桜花「好きです」


ー!?はい?何と申され


桜花「好きなんです!清水君の事っ!」


ーーーはいっ!?僕は清水ですが何ですとっ!?

どうしてこうなった!?

目の前にいる女の子から好きだと言われている。

清水なんてありふれた名前だから、誰かと勘違いしているんじゃないか?とか

誰かが悪質な悪戯をして?


桜花「…あ、あのぅ~?」


とか思っている1997年3月1日放課後の屋上。

清水忠弘(しみずただひろ)16歳、恋愛してる奴らは爆発しろと願い続けただろうか?

恐らくは、女の子に縁がない人生苦節16年。

とうとう僕にも春が来たのか来るのかどうかっ!?

d、ど、童貞やっ!そうや俺はDTやっ!

でもなあでもDTでも夢があるんだぞ!

女の子と手をつないで一緒に帰ったり

この間わずか1.68秒っ!


桜花「ダメ…なんです。今じゃないと!」

今?そう彼女に言われ僕は'本来の目的'を思い出す。


桜花「ずっとずっと前から好きだったんです!」

彼女は真剣なまなざしで、とてもそれが

悪戯では無いことは容易に分かった。

僕は今日、'死ぬ'つもりだった。

なのに邪魔が入った、いや邪魔と言っては失礼だろうか。

とにかく目の前の彼女が僕を好きだと言っている。


桜花「だ、だから私と付き合って下さいっ!」

そんな邪悪な考えを遮ろうとするかのように

彼女が言葉を続ける。

改めて彼女を見てみる。

見覚えはー…

確かにあった様な気がする。

中学校から一緒だった子だか…?

クラスはどこだったっけ?

てか名前も分らない…


桜花「ご、ごめんなさいっ!でも今日言わなきゃって…」

困惑した僕を見てか、彼女はそう言った。

中学時代もとより、過去から現在に至るまで

僕は女の子という、生き物に触れた覚えがない。

いや、実際にあったのだろうけど実感がないのだ。


桜花「へ、変な女の子でごめんなさいっ…よ、良かったらでいいんで…」

一々仕草が可愛いと思った。

ああ、神様ありがとう。

と神に感謝の意を表しーーー…ってか

何してんだよっ!せっかく女の子から告白、告白っ!?

いや何でもいい!その好きだって言われて僕はどうしたら?ーー


桜花「あ、あの何かしゃべって!は、恥ずかしいから…」

少し上目遣いで僕を見る彼女。

イッツ!キューティクルっ!!

心の中でグッと!ガッツポーズをする。

てか何か答えなきゃ何か…でも

女の子なんて耐性のない生き物に何て言葉をかけたら…


忠弘「アッ!」

僕は言う。


桜花「あっ…?」

彼女首をかしげる。


忠弘「アンパンッ!」

食べたい物の名前を口に出して、勇気を振り絞るって

それなんてエロg。

いや正確にはエロgじゃないけど。

てかこの時代にあるんですか作者さん?

(作者「まだ発売されてないんやでぇ~」)

どこからかそんな声が聞こえた気がしたが

気にしない事にした。


忠弘「と、とにかくちょ、ちょっと待って!」

桜花「う、うん…?」

あっ、ちょっと彼女が困った顔してる。

そりゃそうだわな、告白していきなりアンパンなんて言われたら

誰でもそうなるわな…


と、とにかく落ち着け。

状況を把握しろ。

よしっ!ラマーズ法でもやるか。


忠弘「ひっひっふぅ~…」

桜花「えっ!?…」

と彼女。

はっ!?いかんいかん

何故にラマーズ法なんてやってるんだ(汗)

とにかくもちつけ!もちつけ僕っ。

かっちょいい言葉を言うんだっ!


忠弘「拙者の子を産まぬでござるか?」

…って直球ぅぅぅーーーー!!!!

見当違いなセリフ言ってる場合じゃねえェェェーーー!!

しかも意味わかめェェェーーーーー!!!!


桜花「えっ!?…えと…はいっ!」

と彼女は頬を赤らめて言う。

(正確にはさっきからずっと赤い)

…おい!通じたよ!?通じちまったよ!?

どうするよ僕!どうするよ!?


忠弘「と、とにかくちょっと待って!」

焦りに焦った僕は彼女を制して

屋上の隅に行き、一呼吸置く。

自分が置かれている状況を理解しようとする。

そして遠目に見た彼女はー…


夕暮れの日光が当たり、とても綺麗に見えた。

スラリと伸びたスレンダーな脚と、端正な顔立ち。

こんな僕を好きだって言ってくれてる。

あっ、なんか今ちょっと泣きそうな顔した…

居てもたってもいられなくなり僕は彼女の元へ戻る。


忠弘「ご、ごめんな。へ、変な事ばっかり言って…」

桜花「うん…いいよ」

や、優しい!可愛くて優しいっ!

なんで僕を?

そんな疑問が頭をよぎった。


忠弘「あ、あの今さっきの事は忘れてくれないかな…?」

とりあえずとんでも発言を撤回したかった。


桜花「うん、いいよ。清水君ってやっぱり面白いね」

そういって彼女は笑った。

すごく…可愛いと思った。


忠弘「でもどうしていきなり?」

何故、告白をしてくれたのか疑問を投げかけてみた。


桜花「……えっとね」

彼女が一拍を置く。


桜花「死なないで!私より先にっ!」

…っ!ガツンッ!!

その瞬間、頭をぶつけたような衝撃が走った。

そして静かに視界がブラックアウトしていく感覚がーーー…


忠弘「んっ…頭痛い…」

気が付いた俺は見慣れた天井に安堵感を覚えていた。


忠弘「さっきのは一体…?」

おぼろげに一人の女の子を想像しようとした、が

ダメだ…思い出せない。


見慣れた天井、そう僕は保健室を出た。

とにかくもう暗いし、家に帰らなければ。

ケータイ電話が点滅を繰り返し、着信履歴を知らせている。

そうか…

今日は'アイツ'の所に行く日だったのか。

デジタル表示の時間は18時30分を示していた。

まだ時間は間に合いそうだ。

寄って行かないと。


待合室。

リラクゼーションのBGMが鳴っている。

自分の名前が呼ばれるのを待っていた。

しばらくすると「清水さん」。

そう呼ばれ'アイツ'の所に行く。


精神科医「17時だったよね今日?電話したんだけど何してたの?」

開口一番、嫌味たらしく'アイツ'は言う。


精神科医「まあいい、とにかく今日も問診始めようか」

とその精神科医は言う。

'アイツ'ことこの医者は、僕の幼少時代からの担当医だそうだ。

父親いわくこの町で一番の医者らしい。

身なりは汚く、衛生的な顔立ちではなくむしろその逆だ。

少年心にうさんくさく、信用成らない相手だと思っている。


精神科医「で、最近はどうなの?調子は?」

とその医者が訪ねてくる。

いつものお決まりパターンみたいだ。


忠弘「…いつも通り…だと思います…」

多少ぶっきらぼうに答える。


精神科医「うーん…まあこればっかりは焦ってもね、どうしようもない事だから」

日記によるとコンピュータのように、

毎回同じことを言うみたいだ。


精神科医「んじゃいつもの出しておくからしっかり忘れずに飲んでね。」

そう言い問診を終える。

薬局に行き、薬を処方される。


短期記憶障害。

僕の持病である。

生まれついて持ったその病気は

僕を苦しめ、いじめ、いびり続けている。

断片的な記憶しか残らない。

誰といつどこでどんな事をしたか忘れるのだ。


忠弘「悲しすぎる…」

ぽつりと言葉が出た。

だってそうじゃん?

楽しい事とか全部忘れちまうんだぜ?

そんな人生誰だって嫌だよ。

色々と考え事をしながら、歩いていると家路についた。


忠弘の母「お帰りなさい」

笑顔で出迎えてくれるのはいつも母。


忠弘の母「ちょっと遅かったね?何かあったの?」

心配そうな表情でこちらを見る。


忠弘「いや、授業が長引いて…行って来たし先生とこ。」

と、とっさに出た嘘を吐く。


忠弘の母「そう…遅くなる時は電話しなさい。お母さん心配だから」

いつも言ってるでしょ、とは言わない。

僕の記憶に残らない言葉だって知ってるからー。


自分の部屋に入りふと考える。

今日は何か嬉しい事があったように思う。

けどそれはもう何だったのかさえ分からない。

いや、忘れているんだろう。


食事を済ませ僕は薬を飲み寝床へ入る。

忘れていた。

日記を書かなければ。

この病気と闘い続けるには必須の作業なんだ。

すると日記帳から、何かが落ちた。

紙切れだ。

ノートかメモ帳の…

そこには短文でこう書かれていた。


ー3月3日屋上から飛び降りて死ぬー


っ!?

そうか…今日飛び降りようとして

して…??


記憶の断片が、僕を襲うように迫ってくる。

んでどうなったんだ?

何でここに居る?居れる?


僕は?どうして?

どうして?

どうして?

どうして?

どうして?

どうして?


繰り返しその疑問が頭を巡る。

忠弘「かはっ!」

頭に激痛が走る。

イタイイタイイタイイタイイタイ……オレハ…何だ?

誰だ?

激しい激痛の中二つ折りのケータイ電話のメモ帳に文字を打ち込む。


ー3月3日屋上から飛び降りず生きたー

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