戦いの果てに
遥か遥か遠い世界の果てと呼ばれる場所。
その場所は未だかつて誰の目にも見渡されることもなく沈黙を保ってきた場所。
周囲を有りとあらゆる侵入を許さない超越の災害に囲まれた絶壁の大陸。
そんな場所が今!!
とある二人の存在により原型も留めないほどに大陸全体を震わせていた!!
「ガッァアアアアアアア!!!」
「ムゥンッッッ!!!」
バギャッッ!
ドゴンッッ!!!
「まだまだァッッ!!!」
「来いッ!!」
バゴンッッッッ!!
まさにそれは世紀末、否、世界の終わりさえも彷彿させる戦いだった。
一方は己が拳が頂にあり神さえも屠れるということを証明するために、一方はこの世界の神としての矜持をかけて。
「頂」の拳が「神」に向かい繰り出される、超スピードなんかでは言い表せないほどの、まるで時が止まったと錯覚させるほどの拳がコンマ数秒で躱され、逆にお返しといわんばかりの神速の蹴りが後頭部目掛け蹴りこまれる。一瞬の体制の変換が命取りになる、繰り出した拳を躱され後の攻撃に移ろうとした本当に一瞬の隙が。
「殺った!」
絶対に躱せない背後からの猛蹴!!まさに絶対の一撃だった。
....だが、それは当たればの話である。
「甘いッ!!」
「ナッ!!!???グボァッ!!!」
ドッゴンッッッッッ!!!!!
あるはずのないことが起こった。
絶対の一撃だった、少なくとも当たれば確実に命を刈れていたと両者ともにそのことは理解していた。だが実際にはその一撃を受けたのは自分であったということを「神」は敗北の泥の中で理解した。
そしてそれは、この男の拳が神にさえ届いたという証明でもあった。
「な、なにをした.....お前の事だ少なくとも魔法の類じゃないのは分かるが、いったい何を」
もはや立つことさえできない致命を負いその命ももう数分も持たないこと知る神からの問い、それに答えるは、たった一人そして人の身でありながら、
たった今、この場所
この拳蹴
この時代!!!
唯一、己だけを信じ突き進みそして神殺しの天業を成し遂げた男であった。
「拳が、脚が、体が、そして何より俺の魂がこの一瞬の為に答えてくれた。
ついぞ超えられなかった生物としての時間の軸から俺を連れ出してくれた。
感謝するぞ、神よ俺はお前のしてきたことに興味はないが、お前のおかげで真の頂に上ることができた....」
「フフフッ、アーハッハハハハハッッ!!ゴフッ!....成程、貴様人間いや通常の生物であることすら捨て時させ本当の意味で超えたということか!
...代償は自身の消滅といったところか.....ゴフッ!!」
神の体も限界が目前であることを知らせるように口から血の塊を吐き出し周辺に血の池を作り出していた。
だがその血の池に移りこむ「頂」の体も徐々に端から砂に還り始めていた。
「ああ、だが悔いはない...この満足感の中で還れるなら一片の悔いもない」
「フフフ...そうか、私を超えた人間の願い位、聞いてやろうと思っていたがそれすらもないか....ならこれは俺からの神からの押し付けということになるな」
「何をするつもりだ?」
「お前は強いおそらく今のお前には誰も勝てんだろう、ガハッ!だ、だがなそれは孤独な拳だ。
孤独な拳はきっとどこかで置き去りにしていく者が現れる、ハァハァ、それを知るための片道切符だ....どうか俺のようには、なって、くれる、な」
「まさか!?おい!....チッ逝きやがった。
....そういうことか、初めてだ尊敬をしたのはお前が。
受け取るぜ、お前の意思とそして優しい拳の可能性を探してみるよ」
「神」だった者の体から淡い金色の風が吹いた。
それは「悪神」と呼ばれ、世界の管理者として世界に絶望し創造しなおそうとした者とは思えないほど優しい金色であった。
残された「頂」は吹きぬけた風に導かれるようにその体を砂に還した。
「悪神」と呼ばれた「神」と、「拳天」と呼ばれた「頂」の戦いは結果としては両名が最果ての大陸ごと丸ごと消滅という形で幕を下ろした。
この戦いは直前の戦争と一緒に後に語られていくことになる。
===約千年後===
「おぎゃぁ!おぎゃぁ!!」
伝説は再起する。