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元魔王様はのんびりしたい。  作者: 皐月 京平
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第5話 夜明けの前に

 せれなは食後に紅茶を淹れると、二郎と綾花に今後どうするか相談することにした。

 「さて、二人は今後どうします?この世界の情報はまだ不足しているから細かいことはともかくとして。」

 二郎と綾花は顔を見合わせ思案する。

 「明日には最寄りの人里について、多少は情報が入ると思うから大雑把でいいのよ?」


 それを聞いた二郎は

 「異世界が危険なのは身に沁みましたよ、少なくとも自衛の力は必須で、生きるために何らかの収入も必要ですよね、それについて学ばせていただけないでしょうか?」


 「敬語とかいらないのよ、私今無職で無官だから。そうね、生きるために力がいるなら鍛えてあげるよ、二人は元勇者で素養は高いはずだし、まあ将来この世界で勇者できるほどまで行けるかはわからないけどね。」

 その言葉に甘え、いつもの口調に戻した二郎は

 「いや、そこまではいいっすよ。とりあえず生きていくうえで必要な力がほしいんで。」

 「綾花ちゃんはどうするの?」

 せれなが綾花に振ると

 「私は二郎君に付いていけるようになれればそれで・・・」

 熱々カップルである。


 「あらあら、二郎君は責任重大ね~」

 「な、なに言ってるんだよ綾花、そ、そうだ、刀お返ししますよ、長剣使うんで。」

 照れた二郎はそう言って刀とホブゴブリンの使っていた長剣を取り出す。

 「刀は持って行っていていいわ、両刃直剣は使いにくいでしょ、それよりその剣と通貨っぽいのだして。」

 せれなはそう言って刀はしまわせる。

 二人は言われたように長剣と硬貨を取り出す。

 「鑑定」

 せれなが長剣に鑑定スキルを掛けると

 

名称 鉄の長剣

材質 粗鉄

品質 最低

説明 鋳鉄製の量産品


 2本とも同じようなものであった。

 「まあ、安物なのはわかるけど、この世界って鍛冶技術が低いのかしら、武器を鋳造とかないわよね。」

 せれなはあきれた声を上げる。

 「まあ本命は硬貨のほうね。」

 まず一番多い直径10mmほどの銅貨を鑑定する


名称 同盟国共通小銅貨

材質 銅合金

発行 ホーリーホック王国

説明 1エーンの価値を持つ硬貨


 「1エーンか・・・やっぱりこの世界にも日本から来た人が居るのか、いたのね、硬貨の意匠に三つ葉葵と「円」って文字を伸ばしたような文字、アルファベットに算用数字で1って時点でそうかなあとは思っていたけど。」

 それを聞いた二郎は

 「1円っていうか、エーンっすか?確かにほかの硬貨にも数字とかあるっすね。」

 10と書かれた15mmほどの銅貨を手に取りそうつぶやく。

 銀貨の方は10mmほどで、100と書かれている、小銀貨4枚、大銅貨29枚、小銅貨106枚、計796エーンということになる。


 「ま、ゴブリンはこれが何かは分からないけど、殺した人族から奪って持ってたんでしょうね、長剣も作る技術があるとも思えないし。」

 せれなはそう評する。

 「じゃあ、あのゴブリン達はどこかで人を殺してたんでしょうか・・・」

 「まあ、そうでしょう、魔物に交渉とか無理だし、人族にはすべからく襲ってくるわよ。」

 「まじかよ。」

 「魔物にも生存本能があるから、殺される前に殺してしまうべきね、どこかでほかの人殺すかもしれないしね。」

 「ほんとに、危険な世界なんすね。」

 「そうだねえ。」


 二郎は茶色い石の事を思い出し、机の上に出し尋ねる

 「そういえば、これは何なんですか?心臓に石があるとかありえないっすよね?」

 「それは魔石と言われる物ね、前の世界にもあったんだけど、魔物は死ぬと体内の魔力が心臓で急速に硬化してそれになるのよ、用途はいろいろで、粉にして魔装具の燃料的に使うか、大きいのだとそのまま魔法陣を付与して使うとかいろいろ用途があるんだよ、この世界でも価値があると思うよ。」

 せれながそう説明すると、綾花は

 「それを売っていけば、生活できるのでしょうか?」

 「そうね、おそらく可能だと思うわよ、前の世界では軍が討伐したり、冒険者が討伐した魔石で魔道具の燃料を確保していたから、この世界でも何らかの方法であると思う。」

 「つまり、強くなれば収入のあてはあるということっすね?」

 勢い込んで二郎が訪ねる。

 「まあ、この世界の情報次第だけど、そうなる可能性は大きいね。」

 せれなはそう答えると、二人に聞き返す

 「まあ、その辺は今後の情報次第よ、とりあえずまず情が足りなすぎます、とりあえず二人は冒険者的なものがあるなら、それで生きていけるようになりたいって感じかな?」

 二郎は

 「少なくとも俺はそうしようかと、綾花は町に残って待っててもいいぞ?」

 「だ、だめだよ、そんな、二郎君だけ危険に合わせられないよ、私も行くよ。」

 綾花は珍しく強い口調で二郎に告げる。

 「はいはい、熱々なのはわかったよ、じゃあ二人に生き残る方法位は教えてあげるよ、魔神様からも面倒見てあげてと言われてるし、望まぬ誘拐の被害者を見捨てるのもなんだしね。」


 「「あつあつじゃないし!(です!)」」


 「ハイハイ、じゃあ明日は軽く戦闘訓練しながら移動して途中で野営、森で50kmだと2日じゃきついから2泊3日で人里まで行く感じで進もうか、ということで、明日もきついから客室で寝てしまいなさい。」


 せれなは二人を「客室1」「客室2」と書かれた扉まで連れていく。

 客室はビジネスホテルの様にベッドと机があり、バスルームはないがトイレ付きで清潔だ、日本のホテルと違うのは魔族仕様でベッドがでかいことである。

 二人は勇者としてのギフトはあってもやはり子供なのだろう、召喚という誘拐とその後の投獄、そしてさらに異世界に飛ばされ命がけの戦闘に森の中での移動、緊張が解ければその疲れであっという間に寝てしまうのだった。



 「さて、大人の時間だよん。」

 せれなは、無限収納からお気に入りのワインを1本と、カットガラス製のワイングラスとおつまみに翼竜ジャーキーを取り出す。

 「ふ~。このために生きている。」

 どっかのおっさんのような事をつぶやく。


 「ゴーレムからの第一報はまだだし、とりあえず無限収納の中でも確認しますか、あの二人の装備も必要ね。」

 そういうと、脳内で大量に送られている物資を整理する。

 「ミスリル貨や金貨がうなるほどあるなあ・・・問題は鋳潰さないとだめなことね~、これなら魔石か宝石でも売っておくほうがいいかな、魔道具は相場わかんないし、この世界の術式も調べないと足が付くよね~。」

 いろいろ問題がありそうだ、とりあえずその辺も情報まちだ。

 「二人は初級冒険者っぽい感じで、皮系の鎧にマント剣帯とそれに付ける小物入れとか水筒かな。」

 背の低い二人には、魔王軍では偵察兵をよくしていたハーフリング等の背の低い種族が使っていた黒い皮鎧(パイロヒドラの皮製)と黒いマント(翼竜の皮膜製)に剣帯と「拡張」の付与済みの巾着っぽい革袋とウエストポーチに水袋を取り出す。

 これなら火、水、風、土の耐性がバランスよく上がるのでいいだろう、パイロヒドラは水と土の属性耐性を持つヒドラの上位種で、炎のブレスを吐き出すゆえ、火属性の耐性も持つ上物理的にも非常に強固で、皮鎧では非常に重宝される素材である、翼竜の皮膜には風の耐性があり、さらに風の加護により矢も当たりにくいという、マントに適した素材である。

 もっと上位にはドラゴン装備もあるがさすがに目立つだろう、それにこれなら魔王軍正式装備で飾り気もない上に、貸し出しや予備として使う前提で作られており、サイズ調整用のベルトで装備する仕様になっているから二人にも着れるはずだ。

 取り出した装備に、「鑑定阻害」の賦与を追加する、この世界でヒドラがいるかわからないからだ。

 あと武器だな。

 二郎は槍のスキルもあったから、刀と同じ構造の十文字槍がいいかな、真田性で槍といえばこれしかあるまい。

 綾花には弓か、魔術の才能が有るので魔術を仕込みたいところだけど、時間がかかるから、今はスキルのある弓を使わせよう。

 体格的に長弓は森で使いにくそうだから150cmくらいの中型ので、弓力はステータス的に40kgくらいか。

 それならヒドラの肋骨製の複合弓にしよう、ヒドラ系は素材として優秀だな、皮は丈夫で骨は強靭な上に弾性が強い、ついでに肉も旨いんだよね。

 矢は桁数えるのが億劫なほどある、1束100のを3つほど出しておくアイテム倉庫に入れといて撃つとき出せばいいのだから。

 「うむ、装備はこれでよいかな、あとはこの世界の情勢に合わせて強くすればいい。」

 まあ、はっきり言って過剰装備である。

 魔王様業が長かったせれなは、すでに下位の魔物というのがヒドラとか下位種のドラゴンくらいの感覚になっているのである。

 ゴブリンとかは歩くとき邪魔な雑草とか小石程度なのだ。

 草原歩いて、雑草何本踏んだか数える人はいない。

 そんな程度である。

 

 ピピピ・・・

 

 ちょうどそのとき、偵察ゴーレムからの定時報告が入る。

 「おっと、ぐっとたいみんぐ。」

 入り口脇にある受信の魔道具の前に座り、画像データをチェック、同時に4倍速で音声データを左右の耳別々に聞く。

 スキル「高速情報処理」「並列処理」の併用である。

 ふんふん、言語は予想した通り違うねなあ、文字も違うけど、かなり変形してるけど漢字らしきものとアルファベッドが一部使われてるみたいだ。

 この村は600人ちょっと位の人口か、村より大きいけど町というには物足りないという程度かな、外周に3mほどの木の柵がめぐらされて、門が3か所か、内側の中心エリアに内壁もある、こちらも木柵で高さは3m門は1か所のみか、規模の小さい城塞都市って構造ね、外壁破られそうになったら内壁内に立てこもって応援を待つって感じかしら。

 酒場には冒険ららしい風体の連中もいる、あとは錬金術師というほどなのかそういった連中に、狩人が多い様だ、村の東側に農地があるので農民もいるようだが、規模的にこの村は農業よりも森から近いのを利用して、狩りで得られる獲物や、薬草なんかを採取して加工するのが主要産業になってる感じに見受けられる。

 画像からの情報で、この村では人種差別は無い様で、人族なら何でも一緒に生活してるようだ、人間もエルフもドワーフも獣人も一緒にテーブルを囲んでいる。

 次に音声データから有用な者を拾ってみる

 1 B1の冒険者パーティーが予定を過ぎても帰ってこない。

 2 流行り熱の薬草が今年は少ない。

 3 最近、いつも見ないような大型の熊が森の外周に出てきている。

 4 ゴブリンやホブゴブリンも多い。

 5 B1パーティーの捜索依頼が近く出るらしい。

 といったところか、あとは酒場のお勘定から一食10から30エーン位と、どの程度食べるなり飲んだかわからないけど大体この程度払う人が多いと。

 

 「まあ、明日1日分の情報が入ればもうちょっと詳しい話も入るかな。」

 せれなはそう言って席を立ち、「指揮官室」と書かれた自室に向う。

 自室にはシャワーが完備されているので、シャワーを浴びるとベッドにもぐりこむ。

 「あとは明日考えよ~っと。」

 こうして、2つ目の異世界初日は終わったのである。

 

  


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