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元魔王様はのんびりしたい。  作者: 皐月 京平
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第1話 元魔王様異世界の大地に立つ

深い森の中。



その中にある妖精の輪そこから物語は始まる。



小春日和の柔らかな日差しに照らされたそこに、唐突に光が走り闇が舞う。

そこに描かれるのは魔法陣。

直径20メートルに及ぶ大型魔法陣、それは中央から交互に5重の輪となり回転する、さらにその上空に2段3段と増えていき、最終的に6層5重の積層型魔法陣が完成する。

 完成した積層型魔法陣は喜ぶように光と闇を深め、急速に収束、3つの塊を吐き出し消滅する。


 「ここは・・・体外魔力がある・・・・そうね、やはり運だけでは帰還できないのか・・・」

 全身黒の重甲冑にどう見ても両手用と思われる漆黒の大剣にカイトシールドを持った戦士が、跪いた姿勢から立ち上がりつぶやく。

 「しかし、可能性はあるのね、本来召喚だけの一方通行であっても、条件次第でランダム送還できるならば帰る手立てもあるのかも知れない。」


 まあ、先のことはまずはおいておこう。

 ここが本来の私の居た地球でないのは確かだ。

 地球には体外魔力が無いし、自分の中の体内魔力もここまで感じれないだろう。

 前の世界を旅立つ際に魔神さまから戴いた知識によれば、この世界でも魔法も魔術も錬金術だって使えるはずだし、ひたすらに鍛え上げ練り上げた力もある、この世界で生きてさらなる送還が可能ならば数億分の1の確率でも帰れる希望があるはず。


 ならばまずはこの世界の知識と情報を集めるべきであろう、この異世界群は基本ベースは同じはずだが、それぞれの世界の「相克の神」によって、どの様に運営管理されているかはわからないのだから。


 「まずは魔術から始めるか。」


 魔法回路を一時凍結、真言魔術式を詠唱、脳内魔法陣展開、右手から初期魔術の一つ、水球を生成する。


 「水球」


 トリガーワードの詠唱により直径30センチメートルくらいの水の球が生成、10メートル先の大木に直撃、その幹をへし折る。


 「体外魔力濃度が高いせいか効果がたかい・・・まあいい、この程度ならば問題あるまい、次は魔法か・・・」

 魔法回路の解凍し通常モードに移行、脳内で魔法顕現シークエンスを想像すると右手の前に直径10センチメートルほどの青い魔法陣が自動展開、その瞬間魔法が顕現し直径1メートルほどの水球が発生、即座に想像していた軌道で高速射出される。


 ぶわっしゃ~~~ん!!!!!


想像以上の威力で大木数本を薙ぎ払い水滴が舞う。


 「魔術で3倍、魔法で10倍ほどの効率か・・・これは少々手加減が難しい、いやこの世界では魔法が極めて強力と考えるべきかな。」

 

 そうなるとこの世界の魔術師は、極めて強力な魔術を行使しうる可能性が高いな、「人間」のスペックがどの程度あるのかにもよるけど、警戒はして損はないかな。

 

 さて・・・

 そろそろ、目の前の問題に取り掛かりますかねぇ・・・・


 今回、魔神様の御配慮でランダム転送の術式を受けたのは私だけのはず・・・なのになぜ・・・・・



 子供が二人も目の前に転がっているのだろうか・・・・・・・



 二人の子供は、男女で中学生くらいであろうか。

 そして、まず間違いなく「召喚勇者」であろう、二人は中学校のものと思われる制服を着ているのだから。

 前の世界の最終戦争末期には、すでに勝敗はだれの目にも明らかであった、それでもなお召喚という誘拐を続けていた駄神に怒りを覚える、この子らの親も友達も心配していよう。

 そんなことを思っていると、どうやら子供が目を覚ましたようである。

 身を起こし周りを見渡すのは、12か3歳位の黒髪に黒目の男の子だ、ま~どう見ても日本人である。

 

 「ここは・・・どこだ?」


 「さあ?どこだと思う?勇者様?」


 その問いに、私は楽し気にそう返す。


 男の子は、後ろに立つ私に気が付くとはっとして振り向き、ぎょっとした顔をする、まあ、目の前に真っ黒重甲冑でフル武装のがいれば誰だっておどろくわな。


 男の子は、微妙に後ずさりながら、隣の女の子の肩を叩き

 「綾花起きろ、やばいかもしれないぞ。」


 別に取って食うつもりはないのに、ちょっとショッキング・・・・

 

 その声で、黒い髪を1本三つ編みにした女の子も目を覚ましたようで

 

 「あ・・二郎くん?さっきの大きい黒い人はどこ??」

 

 そうつぶやきながら周りを見て、私と目が合う。


 「キャ!」

 

 小さく悲鳴をあげて二郎君の後ろに逃げ込む。


 シクシク・・・私ってそんな怖いかなあ・・・・・って、そういえば儀礼用の威圧感満載の装備のままだったか、魔神様との謁見したままの格好だった事を思い出す、私の職業的に舐められたら負けなので、本来の姿と声を隠すための装備である。

 

 ギフトである「統合メニュー」その「装備管理」「無限収納」を利用し装備を普段着に変更する、黒い半着に黒のたっつけ袴、足元はさすがに不便なので黒い編み上げブーツ、上に袖なしの黒い長羽織を羽織って腰には赤い鞘の二本差しである。


 突然鎧が消えて驚きながらも、目の前に立つ20歳くらいで黒髪をポニーテイルにした黒目の私を見た二郎君は


 「なんだいまの・・・しかも女??いや、今はどうでもいいか、それよりあんたも日本人なのか?」

 「そうだよ、二郎君と綾花ちゃんでいいのかな?」

 「ああ、そうだ、俺は真田二郎ってんだ、こっちで隠れてるのが武田綾花だ、三日くらい前に召喚されて

勇者やれと言われてそのまま、地下室に閉じ込められてたんだ。」

 「そのあと大きな音がして、すごい揺れて怖かったの・・・」


 どうやら年齢的に即戦力にできなかったから、閉じ込めてたってところかな。


 「それで、あんたはさっきあった黒い神様の言ってた奴なのか?」


 誰だそれは?


 「どういうことかな?」


 「揺れも、音もなくなって、それまで来てた食事も来なくなって二人で死んじゃうのか不安になってたら突然床が光って、真っ白な場所にいたの・・・」


 「そしたら黒い神様が現れて、勇者としての職務は終わった、お前たちを呼んだ勢力は敗北したって言われて、このまま消えるか、生き残る可能性にすがるか選べと言われたんだ。」


 「私たちが生きたいって言うと神様は、我が配下を送った異世界への門にお前らも送り込んでやろう、敵対者である故何もやることはできぬが、世界の被害者であることを手紙に書いてやるから、セレナベルに渡すがいい。と言われて、気が付くとここにいたの・・・」


 綾花はそういうと真っ黒な封筒を差し出してくる。


 それは我が魔神様の勅命として使われていたものであった、封印を専用の開封魔法で開け、中を改める。


 「セレナベル、いやいまは「せれな」と呼ぶべきか。

 お前の世界から呼び出されていた幼子がおったので、お前のもとに送ることとした。

 お前の「魔王」の任はすでに解かれており、我はすでにお前への命令権をもた無いが、こ奴らは世界の被害者である、お前と同様にな。

 生きる覚悟あるならば、生きる術を与えてやるといい。

 お前が今いる世界がどのような場所かは我にもわからぬが、お前ならばそうやすやすと死にはすまい。

 それと、もう一つ、お前に退職金を渡していた事を伝え忘れたな、我が分体であった他の魔王達も、我に吸収される前にお前の今後に祝福をと願っておった故、お前の無限収納に各魔王の遺産とお前の城や拠点にあった宝物、物資を送り込んでおいた、生きる術とするといいだろう。

 元魔王セレナベル、お前の前途が明るい物となることを祈るぞ。」


 生きる術を与えよか、私も生きる術を魔神様と魔王様方から戴いたものだ、それをこの子らに与えよという、まあ、さすがに魔神様だけあって「生きる意志があれば」という条件付きだが。

 さらに脳内で「統合メニュー」「無限収納」を選択、リスト化するといつもの持ち物のフォルダー以外に「魔神城」「第一天魔王城」「第二天魔王城」「第三天魔王城」「第四天魔王城」「第四天魔王関連施設」というのが増えており、その中にはどんだけあんだよ!と突っ込みたくなるほどの宝物や物資、が入っていた、時間があるときに整理しないとと考えつつ、心配そうに私をうかがっている二人に


 「話は分かりました、まずは自己紹介しましょう、私は「鈴宮せれな」お前たちと同じ召喚勇者でしたが、一身上の都合により駄神の勢力を敵とし、魔神様の元で長く修行を重ね、第四天魔王セレナベルとして駄神を屠っていた者です。」


 「じゃあ、あの黒い神様は・・・」


 「私の敬愛する元上司、魔神様である、お前たちを呼び出し誘拐した駄神共はすでに死に絶え、あの世界は魔神様が吸収し消滅しました、その際に魔神様はお前たちを見捨てることをせず、生き残る可能性に賭けて私の元に送ってきたとのことですね。」


うなだれ、考え込んだ二人にスキル「ステータス看破」をかけると


氏名   真田二郎

種族   人間

称号   元勇者

レベル  1

ギフト  「基本異世界人」「基本メニュー」「武技の才」

スキル  「刀術LV2」「槍術LV1」「算術LV2」「科学LV2」

 

氏名   武田綾花

種族   人間

称号   元勇者

レベル  1

ギフト  「基本異世界人」「基本メニュー」「魔術の才」

スキル  「刀術VL1」「弓術LV2」「算術LV3」「科学VL3」「調理LV1」

     「ハウスキーパーLV1」

 各ステータスはまあ、レベル1にしては高いようだが、この世界で相対的にいいのか悪いのか判断できないので、今は割愛する、駄神の一派は召喚勇者が私のように裏切らないよう、召喚時に「隷属魔術」「強制魔法」を施すが、それはすでに解除されているのが確認できた、そうなれば判断は自分のものである。


 そのとき私の早期警戒魔法の範囲内に魔物と思われる物が入り込み、ゆっくりと接近しているのを感知した、ならばさっそく確認しなければいけない。


 「この世界の知識は私にもまだないけれど、生きる上で力が必要なのは間違いない様です、さあ、あなたたち、どうしますか?」


 はっとして、こちらを見る二人の足元に無限収納から前に作った習作である「打ち刀」2本と「短刀」2本を取り出し、二人に告げる。


 「生き残る意志あるなら大刀を取りなさい、その意志なくば短刀で自害なさい。」


 魔物のいる世界は厳しい、戦い命を奪わなければ命を奪われるしかないのだ、たとえ二人が子供だとしてもその意志を確認しないといけない、自らの意志で戦えない者の面倒まで見れるかわからないのだから。


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