聖権騎士
俺が目を覚ましたのはそれから10日が過ぎた昼下がりだった。
あの後かなり大変だったらしい。
俺が力をぶつけた玄関前はあの後砂化が進み玄関の一部を倒壊させてしまった。
騒ぎを聞きつけた闘士ギルドの面々が集まり、父さんたちがその場を納めるまで大騒ぎになっていた。
「しかし、どうしたものか…」
父さんが真顔で呟く。うん、恐いよ?
「ラリーゴ…」
母さん、哀しい顔しないで。
「まさかあの惨状をこの子が起こしたなんてな。まだ5歳だぞ?」
天井を仰ぎ目を閉じる父さん。
「聖権騎士は魔法で戦闘不能になっていたわ。雷系魔法『雷迅』。信じられない…」
だよね、俺も記憶が少し曖昧で自分がやった事に実感がない。
父さん、母さん迷惑かけてごめんなさい。
でも守りたかったんだ、ミュウも先生も。
「…ラリーゴ……」
なんだかいたたまれない。目が覚めてるのに声が掛けれない。
「さすが俺の息子だ!!わずか5歳でワイルドスピリットを引き出すなんて!!」
「ええ、本当に!教えてもいない雷迅を完ぺきに唱えているわ。ラリーゴは天才よ!」
はい?そんな感じだったの?
「父さん…母さん…」
「「ラリーゴ!」」
「目が覚めたのね、ラリーゴ!」
「ラリーゴ、体は痛むか?」
2人は俺の手を取り心配そうに顔を覗き込む。
「ん、大丈夫だよ。」
大丈夫だ。痛みはない。
「けどお腹ペコペコ。」
俺がそう告げると父さんは
「じゃこれを食べろ。栄養満点だ!」
父さんが差し出してきたのは黄色いフルーツ。
バナナだ。
こちらの世界でもバナナはバナナだった。
ゴリラ顔にバナナは最強だよね!
ミュウの上目つかい並みの破壊力だよ。
結局俺は貰ったバナナ一房全部平らげた後また少し眠ってしまった。
「失礼する。」
夕刻、来客があった。
3人の聖権騎士だ。
ドアの影からこっそり様子を伺う。
「この度は我らの手の者が犯した罪の謝罪に伺った。ご子息は…」
リーダーらしき騎士が父さんに謝意を伝えている。
「息子は無事だ。先ほど目を覚ました。」
「おお、それは何より!申し遅れた、私は聖権騎士団南方面部隊隊長、ラムザと申す。」
「俺は絶闘士、マシラだ。」
「こちらは私の部下でゲオルグとハサン。」
ゲオルグとハサンは軽く会釈をしただけで言葉は発さなかった。
ラムザが言うには
「メルギスはここより南西にある我らの砦で獣人族をその手にかけ逃走した。」
との事。
その後ユウタウンにたどり着き教会をみつけたので逃走資金の無心に来たのだそうだ。
そこで事件が起きたって訳。
「それで?そのメルギスとやらは?」
父さんが少し低い声でラムザへ問う。
こえー、父さん超こえー。
「我ら聖権騎士の名において斬魔の剣の前に果てた。」
そうか、死んだのか。
多分だけどほとんど俺の攻撃のせいだろうな。
ラムザは止めを刺しただけなのだろう。
ネーナ先生を傷つけた。ミュウを怖がらせた。
それが奴の最大の罪。
そう割り切る事にした。
本日ラスト、21時更新いたします。
引き続き俺ゴリをよろしくお願いいたします。